甘い言葉 ページ23
「なにも戦えって言ってるわけじゃない、姉さんたちのことを気にかけて欲しいんだ。」
「頼む」と懇願されて、思わず下を向いて黙ってしまった。
「お前って変なとこで冷淡だよな。」
ため息をついて吐かれた言葉をすぐさま否定した。
「違うの、私には……荷が重いよ。」
冷淡だとかそういうことじゃない。
突然抗争の話を聞かされて、家族を守れなんて言われても無理だ。
私にできることは兄がした話が杞憂で終わることを祈ることだけ。
「A……お願い。」
頬を温度の違う両手で包まれ、色の違う目と目があった。
力で抑えつけることが少なくなったら兄は専ら"お願い"と称して私に言うことを聞かせようとする。
その言葉に弱いこと知ってるくせに。
言われると断れないこと知ってるくせに、本当にずる賢い。
「わかっ……た。」
ほら、物分かりよく受け入れるしかないじゃない。
兄は満足そうに手を離した後、「お母さんに会ったのか？」と尋ねた。
「どうして知ってるの……？」
「手紙に書いてあった。お母さんがお前に会えて嬉しかったって。」
頭を抱えたくなった。当たり前だ、夏兄を口止めしてもお母さんから兄さんへは筒抜けじゃないか。
「ありがとうA、お母さんすげぇ幸せそうだった。」
「そう……」
逃げたのに、幸せって思ってくれてるんだ。
「やっと踏み出してくれたんだな。」
心の底から嬉しそうに兄はわざわざ席を立って座ったままの私を抱きしめた。
言葉にできない圧迫感が私を包んでいる
助けを呼ぼうにも、周りに人はいないし私たちの席はランチラッシュからは見えない死角だった。
偶然なのか計算高いのか分からないけど、今は騒がない方が妥当だ。
「やめて、怖い。」
「悪ぃ、でも嬉しくて…」
静かに訴えると離れてくれたものの、妙な不快感はまだ治らなかった。
「A、踏み出せたお前なら家族を守ってくれるって信じてる。だから頼む、期待してる。」
今までかけられた事のない言葉の雨にクラクラしていた。
「まかせて……」
小さく開けた口からため息のように放った言葉。自分自身、つくづく都合のいい女だと思う。
強者の兄に、あんなに抑えつけられてきたのに甘い言葉をかけられるとコロッと約束を聞いてしまう。ドロっとした蜂蜜を耳に塗りたくられている気分だ。
この時の私は、この約束が自分の首を絞めるなんて知らずに兄の言うことを受け入れていた。
あーあ、こんなつもりじゃなかった。
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名無し65741号(プロフ) - 更新待ってました！！ありがとうございます！ (37分前) (
レス) id: 9c5ca5a812 (このIDを非表示/違反報告)
くじら(プロフ) - めっちゃ好こです！更新頑張ってください！ (4月5日 8時) (レス) @page30 id: 85541f6d4c (このIDを非表示/違反報告)
爪楊枝 - 読んでいて、すごく楽しいです！！ (3月29日 8時) (レス) @page30 id: ee4a2d718e (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - アップルパイさん» ありがとうございます！感情移入して読んでくださりとても嬉しいです！亀更新ですがこれからもよろしくお願いします。 (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - 名無し47183号さん» ありがとうございます！亀更新で本当に申し訳ありません…！これからも応援していただけると幸いです！ (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：餅つき団子 | 作成日時：2023年3月7日 17時
