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昼寝をするのにも飽きてきた。



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立ち上がって窓の外を見る、まだ明るい、時計を見る、まだ早い、畳に寝転ぶ、寝るほどでもない、立ち上がって…


というのを、ぴったり6回、繰り返した。


ところで時刻は午後1時だった。相葉が夕食を運んでくるまで、まだ5時間もあると考えると、果てしなくつまらなくて、大野は寝転んだまま ぐりぐりと畳に額を押し付けた。


あれだけ耳を澄ましていた鳥の声も風の音も、悪くはないのだけれどあんまり続くと退屈だった。

ふう、と吐いたため息が、古くて上品な畳の上を転がっていく。それを見ているのにも、飽きた。



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【城崎の いでゆのまちの秋まひる 青くして 散る柳はらはら】



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櫻井がその歌を持たせてくれたのは、昨日の晩のことである。

厳密に言うと、夕食を運んできた相葉に、櫻井から…と言って手渡されたものだ。


----『文学オタクなんです、あの人(笑)ときどきこういうことするんです。ごめんなさいね、めんどくさいかもだけど付き合ってやってください』


辛口にそう言う相葉の目は、しかしとびきり優しく細められていた。


めんどうだなんてそんなことはあり得ない、とぶんぶん頭を振って否定した大野を(相葉の前で初めて首を横に振ったかもしれなかった)、相葉はこれまた優しげな顔で見て、笑った。



【秋まひる 青くして 散る柳はらはら】




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時計を見ると、午後1時半だった。大野はもう一度、悩ましげに息を吐いた。


貰ったときは嬉しかったのだけれど、その歌を眺めていると、だんだん悲しくなってきた。

櫻井は、大野が昼間 外に出られないことを知っていて、わざとこの歌を選んだのだろうか。


窓から覗く空は、青々と秋晴れである。

川のそばに行けば、風に散らされる柳が、なんとも風流に落ちていくに違いない。



(いじわる……)



櫻井のくれた歌の所為で、どんどん外へ出たくなる。


心にうんと素直になれば、涙のひとつも出てきそうであった。我慢ができたので、出さなかった。



風が吹いて、細くしなだれた枝から、柳の葉がひとつずつ落ちていく。

その動きはじつに自由であるように見えて、しっかりと螺旋の規則に従って、美しく降りている。


古い時代の女の、涼しい目元のようにしゅんと繊細な葉の形。



大野は目を瞑ってそれを想像した。そして、



つぎに目を開けたときには、もう立ち上がって部屋の扉を開けていた。



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きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん!こちらにも来ていただいて本当に幸せです〜ありがとうございます(泣)ご期待に添えるようなお話が書けたらなと思います! (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - はるさん» はるさんはじめまして!お越しいただき誠にありがとうございます。そんなふうに言ってもらえて幸せです♪がんばります! (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - やっぱりきんにくさんの小説が大好きです!癒しです!続き楽しみにしてます! (2021年1月6日 19時) (レス) id: 820f2de8f4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - きんにくさん、初めまして。素敵なお話ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - satominさん» satominさんありがとうございます♪毎度毎度、恐縮でございます。おおお…私が読んでる本は暗くて長くて素敵な本です(笑)その人たちみたいに書けたらなあと思いながらなかなか…な日々です(笑)嬉しいことを聞いてくださってありがとうございました♪ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 3c003d42b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年10月19日 16時

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