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歩いたら、コンクリートと下駄の裏が、カランカランと非日常な音を響かせた。




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宿を出て坂を下れば、すぐに川の通っている温泉街に出た。


街、とは言っても、屋根の低い店がおとなしく並んでいる、じつに落ち着いた街並みだった。

そのひとつひとつが、ほくほくとした活気に包まれていてあたたかく、湯の都という感じがした。



街には、平日を狙ってやってきた女子大生が一組居るだけで、その女たちも割に静かに歩いていた。



通り過ぎるときに、くすくすと繰り広げられていた会話、



「やっぱ行くなら公立ちゃう?私立はアカンで、ブラックや言うし」

「てゆうか私立とか一生おらなあかん気いすんねんけど」

「体育教師とか一生おるもんな」

「おる!(笑)オッサンの体育教師ずっと同じ高校おんねん」

「でも公立選んで変なとこ飛ばされてもなあ」

「分かるう」

「30歳で30万稼げると思う?」

「さあ〜いけるんちゃう?まあ残業代つかへんからな、どうやろ」

「意外とわりにあわんらしいで」

「子ども好きじゃないとマジでやっていかれへんと思う」

「それなー」

「老後の安定だけが夢」

「それなー」



同じような形の下駄を、カラカラと響かせながら、4人で横一列に並んで、顔を寄せ合って歩いている、その若い女たちは


地元の言葉を、喋っていて


会話の内容を、ひとつも理解することは叶わなかったけれど、その訛りが

大野には、とても不思議になつかしく聞こえた。



(懐かしいとか、へんなの)



ふふ、とひとりで可笑しくなって、笑った。



ぴき、と、笑みを忘れていた頬が引きつって、大野は驚く。



足を止めた。

カラ…と、下駄が、もっと鳴りたそうにしていた。




ふ、と左に寄せた視線に、つらつらと流れる川と、しなだれた柳。




いつのまにか、口角を上げることを忘れてしまっていたようだった。

それがいつからかは思い出せなかった。少なくとも、城崎まで送ってくれた二宮と別れるとき、笑って手を振ることができなかったことは確かだった。



(なんで分かんなかったんだろ……)



石のようになっていた頬を、むんと指でつまんだら、外の冷気に 冷えていた。


湯籠の中から、一枚の紙を取り出す。

それを、曇りの空にかざした。




【こころ皆 浪にながれて 月の糸】




櫻井が持たせた歌だった。

頬に当てたら、紙のほうが、いくらか温かかった。




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里→←風



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きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん!こちらにも来ていただいて本当に幸せです〜ありがとうございます(泣)ご期待に添えるようなお話が書けたらなと思います! (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - はるさん» はるさんはじめまして!お越しいただき誠にありがとうございます。そんなふうに言ってもらえて幸せです♪がんばります! (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - やっぱりきんにくさんの小説が大好きです!癒しです!続き楽しみにしてます! (2021年1月6日 19時) (レス) id: 820f2de8f4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - きんにくさん、初めまして。素敵なお話ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - satominさん» satominさんありがとうございます♪毎度毎度、恐縮でございます。おおお…私が読んでる本は暗くて長くて素敵な本です(笑)その人たちみたいに書けたらなあと思いながらなかなか…な日々です(笑)嬉しいことを聞いてくださってありがとうございました♪ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 3c003d42b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年10月19日 16時

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