閑話：said安室−1 ページ8
車を運転していると隣からの視線を時々感じたけれど、それはすぐにそらされて、すでに自分に視線を投げていないとわかる。ちらりと隣を盗み見れば、助手席に無理やり乗せた彼女は窓の外の景色をじっと見つめていた。流れる景色を見ながら、何を思っているのかはわからない。
けれど、記憶喪失と言う割には、随分と冷静だなと思いつつ、車を自宅に向けて走らせる。
少しだけ探りを入れるために質問をしつつ、彼女の様子を注意しながら見つめていると、彼女はどうもすぐに諦める癖があるらしい。
考えてもわからないことをグダグダと考えることは無駄なことだと思っている。
間違ってはいないだろうが、それでも、その様子は淡白だなと感じるには十分だった。
またしばらくの沈黙か続いた。そして赤信号で止まった時に彼女の方を見てみると、どうやら疲れていたのか、静かな寝息を立てていた。
安「……この状況で眠りますか…普通……」
年頃の女の子、しかも、あの路地裏で男に襲われていた女の子が、男が運転する車で静かに寝息を立てるとは。
警戒心がないと言われてもおかしくない。
少しため息をつきそうになるも、そういえば自分が彼女を無理やり助手席に乗せたのだから、この場合、どちらに非があるのかを問われれば、おそらく自分の方だろう。
そう考えると、とても微妙な気持ちになる。
安「……とりあえず、保護しなければならないし……あまり深く考えるのはよそう…」
そう結論付けて、自宅に向かってただただ車を走らせた。
しばらく走らせると自宅のマンションが見えてくる。車を駐車場に止めて、助手席に乗っている少女の怪我にさわらないようにシートベルトを外して抱き上げる。
安「……さっきも思ったが、この子はちゃんとご飯を食べているんだろうか……？」
異様に軽い気がする。ふわふわと揺れるこげ茶の髪を見つめながら、塞がってしまった両手の代わりに足で扉を閉めて、ロックをかける。とりあえず着替えは明日でもいいだろう。と思い、車の中に置きっ放しにすることにした。
マンション内に入り、エントランスのロックを解除した後にエレベーターに乗り、最上階のボタンを押す。
『……おにいちゃん……？』
突然腕の中でそう小さく呟いた少女に驚いて、腕の中の少女を見下ろすと、どうやら寝ぼけているらしく、うっすらと瞳を開けて僕を見上げている。
しかし、”お兄ちゃん“とは……？
首を傾げながら、僕は彼女を見下ろしていた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
