優しさをください。34 ページ46
？「だめだ、Aっ、こっちにくるな！！」
『え……？』
？「Aっ！！」
『――おにい、ちゃん……？』
**
喉から、声にならない悲鳴をあげて、眼を覚ます。体を起こした瞬間に、激痛が走り、頭がくらりと揺れて、私の体は再び倒れた。
柔らかな何かに体がぽふりと受け止められる。
『(………ここ、は……)』
ほんの少しだけ記憶を手繰れば、そこは安室さんの家の寝室だということに気づく。なぜ私はここにいるのか、それはわからないけれど、どうやらまた、私は安室さんに迷惑をかけたらしい。
『(早く、ここから、出て行かないと……)』
また迷惑をかけてしまう。
ただでさえ、私はすでにありえないほどの迷惑をかけているのだ。助けてもらってからたった一日で、なぜあそこまで不幸なことが起こるのか、知りたいくらいに。
神様にでも嫌われているのだろうか？
それなら、納得もいく。そして、笑えてくる。
『(私が神様に嫌われているから、不幸なことが続くのかな……)』
そうだとするなら、私にはどうにもできないことだ。神の領域に、たかが人間である私が踏み入ることなどできるはずがない。
乾いた笑いをこぼしながら、体から痛みが引くのを待っている時。
かちゃりと、寝室の扉が開いた。
当たり前だけれど、現れたのはこの家の家主。
少しだけ襟足の長い金髪に、褐色の肌。そして、空色の瞳。
『(……安室さん)』
安室さんは、片手に何か少し大きめの器と、タオルを持ってきている。そして、目を覚ました私を見て、その空色の瞳を見開いた。
安「Aさん……？」
『(あ、今度は呼び捨てじゃない……)』
私の記憶に残っているのは、少しだけ乱暴な言葉遣いをした安室さんだ。普段のその柔らかな雰囲気からは想像できないほどに興奮した姿と、乱れた口調に、冷静な部分でそう思ったのを思い出す。
私が目を覚ましたのを見た安室さんは、本当に安堵したような表情をする。
安「よかった。目を覚ましてくれて……」
『…………』
声を出したいけれど、あいにくと、私の喉も口の中もカラカラで、声を出さらような状況ではない。
それに気づいたのか、安室さんは私に「少し待っていてください」と伝えて、そのまま踵を返し、寝室から出ていく。その後ろ姿を見つめながら、私はなぜか、胸中に襲ってきた寂しさに首を傾げた。
数分もしないうちに安室さんは再びひょこりと寝室に現れる。
手には、水の入ったグラスを持っていた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
