優しさをください。21 ページ25
軽く、本当に、ひょい、という効果音程度で安室さんは相手の拳をかわして私を見つめている。
未だに体は震えているし、涙でぐしゃぐしゃの顔を見つめられているという羞恥がないわけではないけれど、安室さんを見つめることができて、私はホッとした。
それに気づいたのか、安室さんも私に向かって優しく微笑んでくれる。
安「それで？あなたはいつまでここにいるつもりですか？」
くるっと男の方に向き直り、安室さんはその体で車内を隠すようにして男と対峙する。
自分では叶わないとわかったのか、男は盛大な舌打ちをしてその場から走り去っていった。
バタバタと走り去っていく足音をかすかに聞きながら、私は安堵で肩の力が抜けた。しばらく、安室さんは警戒して車のロックを外すこともせずに周りを見回していたけれど、安全だと確認できたのか、車のキーをポケットから取り出してロックを解除する。
運転席側の扉が開いたと同時に、風がかすかに入ってきて、汗まみれになった体を一気に冷やしてくる。
体が寒さで震えたのを見た安室さんはきていたジャケットを脱いで私の肩にかけてくれた。
安「大丈夫ですか？」
『な、んとか……。すみません、結局、迷惑ばかりをかけてしまってますね。私……』
安「いえ、気になさらないで。それよりも、先ほどの男は？」
『……わかりません、けど…、あの路地裏で、私を襲ってきた、人と…同じだと、思います……』
安「…なるほど……。とにかく、早くここから離れましょうか。動けますか？」
『…大丈夫です……』
そう言って体を動かして見たけれど、恐怖が残っているのか、未だにガチガチに固まっており、うまく体を動かすことができない。それは、私の行動を見ていれば明らかなことであり、そして、その流れになるのも自然だった。
安「大丈夫そうではありませんね…。じゃあ、抱き上げますから
『えっ！？いえ、大丈夫…きゃっ！』
安「大人しくしていてください。それに、助手席に移すだけですから」
わかっているけれど、外で……しかも。人目の多いこんなスーパーの駐車場でやられたら、目立ってしまうのは必然。しかし、なによりも安室さん自身が人目をひく容姿をしているのだ。こっそりなんて言う方が無理な話である。
が、安室さんは容赦なく私を横抱きにして移動をし、少しの間僕に捕まっていてくださいと言われたのでしがみついていたら気づけば助手席に降ろされて、しっかりとシートベルトまでつけられていた。
……紳士って怖い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 282人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
