優しさをください。18 ページ22
驚くほどの色香に、私は顔を真っ赤にしたこと思い出す。あれは、殺人的すぎると思う。あんなにも整った顔で、あんなにも甘やか声音で、あんな言葉を囁かれたら、誰だって赤面するに決まっていると思うのだ。
『(思い出すだけでも恥ずかしい……っ)』
結果的に私は全力で首を左右に振って『自分で着ます！』と言い切った。途端に離れた安室さんを涙目で見上げると、とても満足げな表情で笑っているのを見て、あ、嵌められた……と思ったけれどもうそれを口にする元気もなかったため、おとなしく服を被ったのはいうまでもないと思う。
もともとがロングTシャツだったのか、私が被って立ち上がれば、ぎりぎり膝上まで丈があるので、正直にワンピースといっても間違いではないと思う。
この格好で安室さんに横抱きされた時の恥ずかしさを誰かにわかってほしい。
たとえ足に安室さんの気遣いで彼のジャケットをかぶせてもらったからといって、それで羞恥がなくなるわけではないのだ。
しかし、彼は私の言葉など聞く耳を持ってくれないので、そのまま車まで連れて行かれた。
一人で悶々と車に乗るまでのことを思い出していると段々とそれも恥ずかしくなってくる。
もう考えるのはダメだ！
『……はぁ……』
なんとか頭を切り替えようとして、なんとなく窓の外を見たのと同時ぐらいに、影ができた。
誰かが、立っていたのだ。
しかし、その“誰か”が問題だったのだ。
「みぃつけたぁ」
どろりとしたその声に。思い出したくないその姿に、私の喉は引きつった悲鳴をあげる。
声を出したいのに出すことができなくて、けれど、ここは車の中だから大丈夫と自分に必死に言い聞かせる。
冷や汗がダラダラと流れているのがわかるけれど、そんなこと気にしていられない。だめだ。これ以上、視線を合わせていたら。
その思考が私の中を支配して、私は自分でも驚くほどに素早くシートベルトを外して、運転席の方に身体を逃した。
「あれぇ？どこに行くのかなぁ？」
そう言いながら、がんっ、と車の窓を拳で叩き、私を恐怖に落として行く。気づけば、男は運転席側の窓のそばに立ち、覗き込んでいる。
濁ったようなの瞳に、完全に体が恐怖に縛られて、私はその場から動くことができなくなる。
「そうそう、そうやっておとなしくしていれば、ちゃあんと、可愛がってあげるからさぁ」
『……っ！！』
気づけば、涙がボロボロとこぼれてきていて、私の頬を、私の足を、安室さんに借りたTシャツを濡らしていった。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
