優しさをください。17 ページ21
宣言通り、安室さんはスーパーに寄って買い物をしてきますねと言い、車から降りてスーパーの中に消えていった。その後ろ姿を見つめて、完全に見えなくなってから、私は座席にもたれかかった。
考えなければならない事は、正直にたくさんある。
自分がどこの誰なのかもわからないし、年齢もわからない。だから、自分が社会人なのか、それとも学生なのか。わからないのだ。学生なら学校に行かなければならないし、社会人なら今のこの状況はとてもまずい。何がって、明らかな無断欠勤をしているからだ。
とにかく、自分がどこの誰なのかということは置いておいても、学生なのか、社会人なのかははっきりとしなければならない。
わからないことを考えてみるけれど、やっぱをわからなくて、私は癖でそのまま考えることをやめてしまった。
小さくため息をついて、俯く。
その時、ふと自分の両手が目に入る。
私は今、安室さんの服を借りている。ネイビー色のTシャツを着させてもらっているのだ。本当は蘭さんが貸してくれたという服があったのだが、自分の全身が傷だらけだということと、未だに血が滲むところがあるということで、着るのを遠慮したのだ。すでにルームウェアを一枚だめにしているのも相まって、借りることに抵抗を感じたのだ。
しかしそうすると、私自身が着るものがなくなってしまう。本当は、昨日来ていた服(ズタボロだったけれど)をそのまま着まわそうとしたのだけれど、流石にそれは安室さんに止められて、理由を聞かれたから、それを説明したら、少し考えた後に、寝室に消えていき、バサバサと音がしたと思ったら、その手にTシャツを一枚持って現れたのだ。
なんだろうと思うと、それを差し出された。それで全てを察した私は思い切り首を振って否定したのだが、安室さんも譲ってくれなかったのだ。
安「そのままの格好で外に出るつもりですか？流石に、車で移動するとはいえ、それはいけませんよ」
『いや、あの……本当に、血が滲んでしまうと申し訳ないので……っ』
安「ですから、濃いめの色のものを持って来たんです。これなら気づかないでしょう。ほら、着てください」
『あ、むろさ…、あの……』
安「…………ああ、それとも……」
無意味な攻防を、実は十分ほど続けていたのだ。それにしびれを切らしたんだと思う。
安室さんは、突然私の耳元まで唇を寄せて、甘い声で囁いてきたのだ。
安「――僕が着せてあげましょうか？」
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
