み 同業者の涙 ページ42
「いい加減黙りなさい、このヒヨッコが。」
へ、と女の声が漏れる。
一気に空気の変わったAに女スパイの顔は真っ白になる。
「どういう教育を受けて来たのかは知らないけどね、」
かつんと一歩、女スパイの元に歩み寄る。
「図に乗りにすぎなのよ、小娘が。」
嘲笑うように女を見下すA。
カタカタと肩を震わせている女スパイの顎を引き上げ、Aはニッコリと微笑む。
「お前如きが女スパイ？
笑わせるな。」
耳もとに怒気をはらんで怪しく囁くと、
ガリッと耳に強い衝撃が走る。
思わず引き下がったAの耳からはポタポタと血が流れている。
窮鼠猫を噛む、まさしく文字通り噛まれたというわけだ。
口から血を流している女スパイは、フッーフッーと怒りにまみれ、先程の恍惚そうな目は消えた。
瞬間、Aの耳を見てさああーーーっと血の気が引いている。
ところがAはさっきとは真反対の笑みをし、親しみを覚える優しい目つきをしていた。
「なんだ、ちゃんと反抗出来るじゃない。」
「あの、あたし…ごめん痛くない？」
「全く…痛いよ。」
苦笑したように肩を竦ませるAは、隙だらけの表情をする。
「大丈夫よ、そんなに怖がらなくても。」
にこりと微笑むA。
目を白黒させている女スパイをよしよし、とあやすように頭を撫で、
ゆっくりと身体に響くように落ち着いた声で言う。
「大丈夫、もう心配しなくていいよ。
貴女を助けたいの、同じ女としてね。」
女スパイの鼻腔を懐かしい匂いがくすぐる。
いつの間にか抱き締められていた女スパイは、途端にボロボロと涙をこぼした。
女スパイが落ちた瞬間だった。
そこから先は話が進んだ。
スパイ網の詳細を把握、女に食事を摂らせ、女性同士他愛ない話もする。
ここが拷問室出なかったら、二人はただの友人にしか見えないだろう。
さて、話が尽きた所で女スパイに今後のこちらの目的を話す。
女はスパイとしての腕は未熟だが、人を魅了させる力はAとは引けを取らない。
結城中佐はそういう点を考慮して、いくつかの条件を元に解放する、そう女に伝えた。
最後女は申し訳なさそうにAに詫びた。
「案外素直でしたね。」
耳の治療を三好に手伝ってもらい、拷問室から帰ったAは、懐かしむような顔で穏やかに言う。
「絆されましたか？」
唐突な質問にキョトンとするA、すると薄い唇が弧を描く。
「さあ、どうでしょうね。」
怪しく微笑む女の真意は誰にも分からない。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (
レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます！もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです！ (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アサノ | 作成日時：2017年7月9日 14時
