る Tryst une nuit ページ12
『はあ、楽しかったわ。』
カツン、
ウッドデッキにイェンのハイヒールの音が響く。
艶やかな彼女はどこへ行っても目立っていて、佐伯という相方がいても、いない物扱いでイェンを踊りに誘う輩が多かった。
でもそこは華型踊り子。
あちらもこちらも、と移りげにならず今日はこの人と、と決めたら決して甘い言葉にも乗らない。
一夜限りのお相手として、最低限のマナーを守る。
そんな彼女は同性からもきちんと認められていた。
『今日はありがとう。』
『なんのこと？ダンスホールに来たんだもの。
きちんと楽しまないと。』
ねっと最後に語尾を大きくつけたイェンからは、普段の"A"の影は見えてこない。
その事を痛感しながら、田崎は内心舌を巻いていた。
その上曉燕であるときは、ウェイトレスの"証言"があった通り、雰囲気は出しても決して"誰か"とは特定させない。
結局のところ"大根役者"では困ってしまうのだ。
『ほら、そんなに寒いと風邪を引く。』
『わあ、ありがとう。』
バサリと佐伯の上着を羽織ったイェンは、ふふっと微笑んで、トンッと佐伯の肩にもたれ掛かる。
俗にいう"いい雰囲気"という奴だ。
「…報告を聞いてもいいか？」
さりげなく、且つスマートにイェンの肩を抱き寄せた田崎は"A"に尋ねた。
スパイ同士の音声暗号とも言える特殊な喋り方は、当然周囲の者には聞こえない。
Aも同じ喋り方で淡々と要点をまとめて報告した。
「やはり日本当局の動きがフランス側に漏れてたようです。」
「そうか、首尾は？」
「ある程度あちらの繋がりは把握してるのですが、厄介なことに不定期なんです。
人数が。」
「…どういう事だ。」
「どうやら商人の何人かが"脚"を買って出てるようで、出入りが激しいですね。
全く賢いやり方。」
自嘲的には鼻で笑い飛ばすAは、素人でも無線傍受を知ってると、暗に言いたいらしい。
その上事情をよく知りもせず迂闊な商人が、商品同然に"情報"も買って出ているらしい。
厄介ごとに巻き込まれる前にトンズラはする、だがそうでなければ儲けさせて貰う。
魂胆が見え見えだがそうはいかない。
少なくともD機関は"甘く"はない。
「わかった、俺の方でももう少し探りを入れる。
お前と智也はこのまま帰れ。」
「じゃああなたの方が引き継ぎを？」
「ああ、俺は"真面目"だからな。」
「そう気をつけてくださいね。」
最後"ムード"の締めに、イェンは背伸びをして佐伯に絡む。
を Une autre personne d'espion→←ぬ Le travail d'espion
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (
レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます！もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです！ (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサノ | 作成日時：2017年7月9日 14時
