第二二訓 ページ22
ーーーはらり
「花見はいいな」
「うん、そうだね。気休めくらいにはいいかも」
数日経っても二人の関係は変わらない。
三日月は只Aの傍へ寄り添い、無理やり何かをしようとか、利用しようだとか、そのような事は一度もなかった。
そろそろ清光も安心してきたのだろう。
まだ三日月にはきつい言い方をするものの、話しかけるようにはなってきていた。
警戒はしていたものの、鶴丸や他の者も、気負いせずに三日月にもAにも接してくれるようになっている。
今のように、必ず三者ではなく、二人でいる事も増えてきていた。
「……ここは楽しいな」
「そうだね。最近は藤四郎兄弟たちのおかげで賑やかになったし、美味しい料理を光忠が作ってくれるから助かってるし…いい事づくしだね」
「やはりそれは皆をまとめる審神者…統率者がいいからだろうな」
「はは、ありがと。…でも私だけじゃない、みんなが一人一人頑張ってくれてるからだよ。遠征も内番も鍛刀も出陣も…ううん、日常生活のどんな事も。私一人じゃできないから」
「…優しいな」
「どうしたの、三日月。最近前より丸くなったね?」
一度口をつぐむと、三日月は少し困ったように口を開いた。
「俺は…言ってしまえば、確かに主の名を知った時、Aを己の中に閉じ込めて俺だけのものにしてしまおうかとも考えていたんだが」
「うわ、物騒」
くす、と三日月は笑みを零すとぼんやりと庭の桜を見る。
小判で買ったこの景色に、皆心躍らせてくれた。
この桜は、外の季節が冬だろうが、咲き続ける。
雪が降ろうと、咲き続ける。
別名を、永遠の愛と。
「…ここ数日、見張られながらでもあったが…あんたと二人、過ごしていてな。……俺はそれだけで幸せだったと気づいたよ」
「三日月…」
「俺から逃げようともがく主を手に収めるより…ここで皆に慕われて、笑顔で楽しそうにしている主が好きだ、俺は。…そんな主と、皆と、ずっと一緒におりたいものだな」
「……ちょっと、冗談でもそういうクサい台詞やめてよ。からかわないで」
「からかっているつもりはないぞ」
「…そういうのをからかっているというの」
いつかと同じような言葉を交わす。
二人はどうも可笑しそうに笑い合った。
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます!!すごく面白かったです。完結お疲れ様でした!第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした!とても面白かったです!小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした! (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか?面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです!宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:稜 | 作成日時:2015年4月10日 14時