【刀剣乱舞】花も花なれ、人も人なれ【完結】

第十五訓 ページ15

「ああ、最悪だ、私」

部屋に戻り、自己嫌悪へと浸る。
書類だらけの机に突っ伏すと、そのまま目を閉じた。

「…ただの八つ当たりじゃんか」

ぐしゃ…

机上の紙をつい、手で握りしめる。
よれた紙は抵抗もなくそのままの形で固まった。

「…あ、主さまっ」

ふと、その声でAは顔を上げる。
そこには五虎退がお供の虎を抱きかかえてそこに立っていた。

「どうしたの、五虎退」

ちょこん、と五虎退はAの隣に座り込む。

「新しくいらっしゃった今剣くん…主に何かしちゃったかなって、不安そうなんです。…えと、何か」

「…ううん、何もしてないんだ」

「え？」

Aは申し訳なさそうに笑いかけた。

「何かあったわけじゃないよ。ごめんね、今剣くんだっけ…には、謝り行くから」

「そう、ですか…広間でお待ちしてますね」

「うん」

ひらひらとAは手を振り、五虎退が出たのを確認するとため息をついた。

「岩融…か」

己から母を奪った神。
それでも心から憎めないのは、きっとそれが彼なりの愛であり…
きっとそれは、間違いであると、悪であると、言い切れないからなのだろう。

「…母様…」

ぎゅっと、賽子を握る。

「……いこう」


−ーーぴしゃん

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