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葵として生きるということは、+Petalのメンバーになるということでもあった。
火事の後、しばらくレッスンを休んでいた。
『葵』になった私にとって初めてのレッスンの日、マネージャーが気を遣ってくれたのか迎えに来てくれた。
「葵ちゃん、大変だったね。辛いでしょう」
「……はい」
「無理しなくていいからね」
レッスン室に入ると、他のメンバーの姿があった。
「葵、久しぶり!来てくれてありがとうね」
「葵ちゃん、大丈夫?」
あのステージで見たキラキラなアイドル達が私を囲む。
皆が私を心の底から心配してくれている。
葵はこんな幸せな世界にいたんだ。
それから1年と半年の間、私は+Petalの屋久谷葵として活動した。
もちろん、最初こそダンスや歌は皆に遅れを取っていたけど、妹を亡くした心労によるものと皆思ってくれたらしい。
ぷらぺたでも、学校でも、家でも。
葵になってからは居場所ができて、誰にも比較されないし、楽しいことばっかり。
なんだ、私にもできるじゃん。
あのとき葵を助けなくてよかった。
だけど安寧は長くは続かなかった。
「人気投票…?」
「そう!人気投票ではっきり順位をつけることで、皆やる気になるでしょう?」
これは私が恐れていたこと。
握手会に並ぶ列がそんなに長くないこと、青いペンライトが目立たないこと、なんとなくそこまでの人気が自分に無いことは分かっていた。
私はただアイドルをやりたかっただけ、葵でいたかっただけなのに。
結果は7位。
下から数えた方が早い。もちろん1位じゃない。
本物の葵だったら……
もっと順位が上だったのだろうか。
そんなことを考えてしまう。
「あおちゃん、そんなに落ち込まなくてもいいじゃないか」
「そうだよ〜こんなの気にしなくていいよ」
うるさい
ウルサイ
皆私を見下してるんだ。
私のこと嫌いでしょ?
数字で比べて、私より上なのを久しぶり!来てくれてありがとうね」
「葵ちゃん、大丈夫?」
あのステージで見たキラキラなアイドル達が私を囲む。
皆が私を心の底から心配してくれている。
葵はこんな幸せな世界にいたんだ。
自覚して、安心してるんだもんね?
もう比べられるのは嫌だ。
私が誰かより劣っていることを知らしめないで。
「そうだ」
「また殺せばいいんじゃん」
そうすれば、比べられなくなるよね。
私が『絶望onステージ!!』の存在を知るのはその夜のことだった。
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みらーぼーる(プロフ) - 花乃子さん» そうでしたか…💦ありがとうございました🙏 (5月14日 16時) (レス) id: 86351c9672 (このIDを非表示/違反報告)
花乃子(プロフ) - みらーぼーるさん» 公開していたのですが、恥ずかしいので現在は参加者様のみの閲覧に限定させて頂いてます🙏🏻ごめんなさい💦 (5月14日 16時) (レス) id: b739fbefbf (このIDを非表示/違反報告)
みらーぼーる(プロフ) - コメント失礼します!「絶ステ本編・あとがき」を公開する日にちはいつですか?公開する予定はありますか?🤔 (5月14日 16時) (レス) id: 86351c9672 (このIDを非表示/違反報告)
花乃子(プロフ) - 救世主さん» ありがとうございます✨キャラクターは他の方に作って頂いた子達で、素敵なキャラクターばかりだったので本編執筆が捗りました! (5月14日 13時) (レス) id: b739fbefbf (このIDを非表示/違反報告)
救世主(プロフ) - 完結おめでとうございます🥳🎉キャラクターがそれぞれ個性的なのが魅力だと思います👍1人1人に裏の面があったり、設定がしっかりしていて飽きずにずっと楽しく読ませていただきました!とっても面白かったです💗🥰 (5月13日 1時) (レス) @page39 id: 0bbfc75c53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花乃子 | 作成日時:2023年3月31日 22時