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昨夜――
「なるせー?」
成瀬の部屋を訪れたのは葵だった。
「え、あおちゃん?だめじゃないか。今の時間は自室から出ちゃいけないって……」
「あれー?そうだっけ?でも大丈夫だよ〜……」
「人狼は私なんだから」
「……え」
葵はにっこりと笑って言った。
その手に握られた鋭利なナイフがぎらりと光っている。
時が止まったように感じられた。
彼女の言葉を脳で処理できない。
葵はいつものように成瀬のそばまで近づいてきた。
「そうそう!殺す前に聞きたいことがあったんだよね。それだけ教えて欲しいな」
「成瀬はさ、私のどこが好き?顔?性格?まあなんでもいいけど。もし、私が誰かの真似をしてて、本当の私は屋久谷葵じゃないって分かったら嫌いになる?」
「……嫌いにならないよ」
「へえ、本当に?どんなに性格が悪くても、成瀬は私のことちゃんと好きでいてくれるんだ」
葵は驚いたように目を丸くすると、嬉しそうに笑った。
――かと思うと、ひどく冷たい表情へと変わる。
「……でも、ちょっと信じられないかな。その場しのぎで言ってるんでしょ、やっぱり。私のことなんか好きじゃないよね。本当は嘘ついてるんだ」
捲し立てるような口調は、抑揚がなく無機質だった。
葵はナイフを持つ右手をゆっくりと上げた。
刃先が成瀬の方に向かって来る。
ただそれを見ていた成瀬だったが、寸前でナイフを払い除けた。
切れた手の甲から血が滴り落ちる。
じりじりと痛んだが、今はそれどころではなかった。
足元に落ちたナイフを急いで拾い上げると、葵にとられないように背中に隠した。
「違うよ、あおちゃん」
葵の目を見て言った。
「自分でもわからなかったけど、ボクはきっとあおちゃんのことが好きだ。それが……本当のあおちゃんじゃ無かったとしても」
「本当はずっと、怖かったんだ。こんな事になってから、誰かがいなくなる度に心が削り取られていってた」
一筋の雫が床に落ちる。
「でも、もうあおちゃんに手を汚してほしくない」
ぎこちなく笑うと、成瀬はナイフの自らの首に押し当てた。
「さようなら」
【須藤成瀬ノ裏】
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みらーぼーる(プロフ) - 花乃子さん» そうでしたか…💦ありがとうございました🙏 (5月14日 16時) (レス) id: 86351c9672 (このIDを非表示/違反報告)
花乃子(プロフ) - みらーぼーるさん» 公開していたのですが、恥ずかしいので現在は参加者様のみの閲覧に限定させて頂いてます🙏🏻ごめんなさい💦 (5月14日 16時) (レス) id: b739fbefbf (このIDを非表示/違反報告)
みらーぼーる(プロフ) - コメント失礼します!「絶ステ本編・あとがき」を公開する日にちはいつですか?公開する予定はありますか?🤔 (5月14日 16時) (レス) id: 86351c9672 (このIDを非表示/違反報告)
花乃子(プロフ) - 救世主さん» ありがとうございます✨キャラクターは他の方に作って頂いた子達で、素敵なキャラクターばかりだったので本編執筆が捗りました! (5月14日 13時) (レス) id: b739fbefbf (このIDを非表示/違反報告)
救世主(プロフ) - 完結おめでとうございます🥳🎉キャラクターがそれぞれ個性的なのが魅力だと思います👍1人1人に裏の面があったり、設定がしっかりしていて飽きずにずっと楽しく読ませていただきました!とっても面白かったです💗🥰 (5月13日 1時) (レス) @page39 id: 0bbfc75c53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花乃子 | 作成日時:2023年3月31日 22時