5 ページ21
◆
それから投票までの間、崎宮未来は何度も考えた。
紅愛と葵、どちらが黒幕なのか。
それで毎回辿り着くのは同じ人物だった。
黒幕のことは許せない。
もしも、このゲームに巻き込まれなければ――
皆死ななかったし、ずっと+Petalでいられたはずだ。
黒幕のせいでぐちゃぐちゃにされたのだ。
しかし、目の前にいる彼女を見ていると、とてもそうは思えなかった。
『投票の時間だよー』
『これが最後の選択。充分すぎるほどの時間を与えたつもりだよ。もういいよね?さあ、人狼だと思う人を指さして!』
クロが楽しそうに投票を始めさせようとする。
しかし、未来の手は固く握られたままだった。
これで全てが決まってしまう。
そう思うと腕が床に引っ張られているように重く感じた。
他の2人も同じようだった。
『何してんの?早くしろよ』
苛立ったようにクロが声を荒げる。
とうの昔に答えは決まっている。
そして、それはきっと正解だ。
でも、もしかしたら……
黒幕がいるなんて嘘で、皆騙されてるだけなのかもしれない。
そんな一抹の希望に縋っている自分がいる。
未来はうつむいたまま震える手を彼女の方に向けた。
おそるおそる顔を上げる。
2つの指が同じ人物を指していた。
「えっ、私!?」
その先にいたのは――葵だった。
葵は紅愛の方を指さしていた。
「私がなるせを殺したって思ってるの?そんなわけないじゃん!……なるせと私は仲良かったし、もし私が人狼だったらなるせは生かしておくよ。それに」
「葵」
紅愛が遮るようにぴしゃりと言った。
「どう考えても貴方じゃないとありえないのよ。言い訳なんてしても無駄よ」
「み、みらいちゃんはなんで……?」
青ざめた葵は、怯えた目を未来の方に向けた。
「ごめん」
未来は思わず目を背けた。
「……ふーん、そっかぁ……なんでかなぁ、やっぱり私のこと嫌いだから?」
葵はブツブツと小さな声で呟いた。
「……葵?」
「ふふっ……あははは!」
突然、葵はからからと笑い出した。
「そうだよ。私は人狼……そして黒幕」
葵は貼り付けたような笑顔をこちらに向けた。
いつもの葵じゃない。
変な不気味さを感じる。
「よかったね。くれあさま、みらいちゃん、ここから生きて出られるね〜……」
◆
35人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みらーぼーる(プロフ) - 花乃子さん» そうでしたか…💦ありがとうございました🙏 (5月14日 16時) (レス) id: 86351c9672 (このIDを非表示/違反報告)
花乃子(プロフ) - みらーぼーるさん» 公開していたのですが、恥ずかしいので現在は参加者様のみの閲覧に限定させて頂いてます🙏🏻ごめんなさい💦 (5月14日 16時) (レス) id: b739fbefbf (このIDを非表示/違反報告)
みらーぼーる(プロフ) - コメント失礼します!「絶ステ本編・あとがき」を公開する日にちはいつですか?公開する予定はありますか?🤔 (5月14日 16時) (レス) id: 86351c9672 (このIDを非表示/違反報告)
花乃子(プロフ) - 救世主さん» ありがとうございます✨キャラクターは他の方に作って頂いた子達で、素敵なキャラクターばかりだったので本編執筆が捗りました! (5月14日 13時) (レス) id: b739fbefbf (このIDを非表示/違反報告)
救世主(プロフ) - 完結おめでとうございます🥳🎉キャラクターがそれぞれ個性的なのが魅力だと思います👍1人1人に裏の面があったり、設定がしっかりしていて飽きずにずっと楽しく読ませていただきました!とっても面白かったです💗🥰 (5月13日 1時) (レス) @page39 id: 0bbfc75c53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花乃子 | 作成日時:2023年3月31日 22時