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「奥にソファあるから座ってて。飲むもん取ってくる」
キヨくんに連れられて私は家に帰らずそのまま隣の部屋へとお邪魔することになった。
初めて入るキヨくんの、もとい最俺ハウスの室内は動画で見たとおりだな。なんて呑気なことを考えてしまう。
まるで、色々なことが一気に起きたから問題について直面するのを脳が拒否しているような感じだ。
「散らかっててごめんね」
「ううん…ありがとう」
キッチンの冷蔵庫からペットボトルのお茶を２本持ってきたキヨくんは、そのまま私の隣に腰掛ける。
しばらく沈黙が続いていたが、先に問いかけてくれたのはキヨくんのほうだった。
「聞いてもいい…？」
「うん…」
「…いつから？」
いつから、というのは彼と付き合い始めたことか、それとも彼が「ああなった」ことか。
「付き合ったのは、半年くらい前…今みたいになったのは…多分、２、３ヶ月くらい前かな」
「なにかきっかけがあったの？」
「………」
「ごめん、言いづらければ」
「ううん、あのね…」
＊ ＊ ＊
ーーーside K
「あのね、」
と口を開いた彼女から説明された経緯。
俺たちと皆でカレーを食べた次の日、家に誰かを上げたことを怒られたこと。
そこで初めて頬を叩かれたこと。異性を軽率に誘ったからだと思ったが、そうではなく性別関係なく彼女が他人と関わることを彼氏が嫌がったこと。
そこから、監視されているような生活が始まったこと。
別れ話を切り出す度に暴力を振られるようになったこと。
彼を目の前にすると、また手を上げられるかもしれないという恐怖から、段々と逆らえなくなっていったこと。
彼女は全てを話してくれた。
けれど、そんなの
(そんなの、全部、俺たちがきっかけじゃねえか…)
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作者名：なちこ | 作成日時：2021年3月2日 4時
