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---side K
Aさんを送るために2人で歩くマンションまでの帰り道。
彼女はいまだにその小さな肩を震わせて俯いている。
気まずい沈黙が続く中、先にその沈黙を終わらせたのは俺だった。
「さっきの人…彼氏？」
俺が急に話しかけたことに驚いたのか、はたまた先程の男について触れられたからか、彼女はビクリと肩を震わしてゆっくりとこちらを見た。
「うん…」
「大丈夫なの？」
大丈夫なわけあるか。ばか。
そう思いながらも、そんな普遍的なことしか聞けない自分が嫌になる。
彼女はまた俯いてしまい、ゆっくりと進めていた足すら止めてしまった。
しばらく沈黙が続き、けれど彼女もた絞り出すような声でぽつりと
「………別れ、られないの」
そう、言った。
この一言が、全てを物語っているのも同じだった。
マンションの彼女の部屋の玄関前まで来ると、先ほどとは違い彼女自身も落ち着きを少しは取り戻したようで「キヨくん、ありがとう。ごめんね、」と笑う。
「彼、なにするかわからないから…お隣さんって言っちゃったし、みんなで集まるときとか気をつけて…私のせいで迷惑かけてごめんなさい。」
「謝らないで Aさんが悪いわけじゃねえじゃん」
そんなつらそうな顔で、笑わないでくれ。
思いっきり「不安です」「怖いです」と顔に書いてあるのに、それを笑顔で上塗りして隠そうとする。俺が好きな君の笑顔が、そんなものであってはいけない。
それに、彼女をこのまま帰してはい終わり、ではいけない気がしていた。
「それよりさ、あいつ、合鍵とか持ってんの？」
「……いや、…あの、」
さっきは偶然あの場に居合わせることが出来たが、ここで俺が帰ってしまえば彼女はどうなる？
彼氏だっていうなら合鍵くらい持っていたって不思議じゃない。俺の予想は的中していたようで、彼女の目線がうろうろと漂い、言葉が詰まる。
これは、ビンゴだろうな。
「持ってんだね？」
俺が再度念を押して聞けば、観念したように彼女もこくんと頷く。
あの男…さっきの様子じゃ何するかわからないし、ここで彼女を一人残していいのか？
いいわけないだろ。
「Aさん、とりあえず隣いこ」
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作者名：なちこ | 作成日時：2021年3月2日 4時
