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---side K
最俺ハウスでの撮影を終わらせて、各々帰宅する。帰りに夕飯でも買っていこうと最寄りのコンビニへ寄った。
そういえばAさんと知り合ったきっかけもこのコンビニだったな。と思い返す。今思えば財布を忘れて隣人の女の人に金借りるとか、相当の黒歴史だな。
あー恥ずかし。
なんて考えながら商品を物色していると、同じように商品を選んでいる女性と目が合った。
Aさんだ。
「こんちは」
「キヨさん！こんにちは」
「仕事帰りすか？」
挨拶をすれば同じようににこやかに挨拶が返ってくる。そういえば、前に行きあったのもこのくらいの時間だし、前見たのと同じようなオフィスカジュアルな格好をしている。仕事帰りによく寄ってるのかもしれないな、と思った。
「そうそう〜夕ご飯買いに」
本当は毎日作れたらいいんだろうけど、平日はなかなかそんな気力もなくてですね〜なんて笑いながら言う彼女の顔を見て眉間にシワを寄せた。
なんというか、以前見たときと違ってクマが酷い。なんだか、全体的に疲れてるように見える。
「なんか…疲れてます？大丈夫すか？」
「あ〜…え〜うん、ちょっとね」
彼女は俺の問いにビクリと肩を揺らして、目線を泳がせてからそう言い、ははっと笑った。
その後「仕事忙しくて、」とぽつり。
彼女の様子に違和感を感じる。
仕事が忙しいというだけで、そんな怯えた表情をするだろうか？けれど俺は大して社会生活を知らないし、サラリーマンなんてやったこともない。
俺の知らない世界があるんだろうと思う。
それ以上その話題に触れることなくお互いにコンビニを出る。コンビニ出たとこで「じゃあ俺こっちなんで」と別れようと思ったが、どうにも彼女が気になった。
「あ、そうだこれ、よかったら」
あたかも今思いついたように、袋の中からエナジードリンクを取り出し彼女に手渡す。「えっ？」という顔をしながらも彼女は受け取ってくれた。
「あんま無理しないでくださいね」
「ありがとう」
これ飲んで元気出すね。と言葉を残して彼女は自分とは反対方向へ歩いていく。
疲れているだろうにその顔で笑う彼女の後ろ姿を、見えなくなるまで見つめていた。
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作者名：なちこ | 作成日時：2021年3月2日 4時
