009-02 ページ14
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［ピンポーン］
鳴り響くインターホンの音、その数秒後
「Aさん？」
インターホンのスピーカーから聞こえた声は先日コンビニで行きあったキヨさんの声だった。
「あの、実は夕飯にカレーを作りすぎてしまって…もし夕飯まだだったら皆さんにお裾分けをと思ったんですが…どうでしょう？」
鍋がよく見えるようにカメラに向けて持ち上げて聞く。やっぱ不審かなあなんて思う間も無く、スピーカーからはキヨさんの
「え！マジ！？カレー！？」
という声が聞こえ、その向こうで
「Aさんがカレー食うかって！」「カレー！？」「やったー！」「ハラ減ってた〜！」というわいわいした声が聞こえてくる。その瞬間に私の不安なんか綺麗さっぱり消えて、むしろ作りすぎてよかったなんて思ってしまったのだ。
「すぐ鍵開けるんで待っててください」
というキヨさんの声から10秒も経たないうちにガチャリとお隣の玄関が開けられる。
「じゃあ、これ、皆さんで」
そう言いながら鍋を手渡し、キヨさんもお礼を言いながらそれを受け取る。
「ありがとうございます。あ、でも待てよ…」
「皿無くね？」
「なんなら米も無いよねえ〜」
「……あ〜…どうすっべ？」
カレーを見てニコニコしていた彼だが、キヨさんに続いて奥からどやどや出てきた3人も口を出し首をひねる。
お皿もお米も無いの…？まあでもここで毎日生活してるわけじゃないならそういうこともあるか…。
「でも俺カレー食いてえなあ」
キヨさんの言葉と表情がなんだかお腹を空かせた子供みたいでぶふっと吹き出してしまう。
そんな私の様子を見てフジさんが「キヨが子供みたいな事言うからAさんに笑われたぞ」とツッコミを入れていた。そんなフジさんにキヨさんも「うるせー」と言葉を返す。
もうここまで来たら、やっぱりこの４人にカレー食べてもらいたいな。
「あの、もしよければ皆さんうちで食べますか？お米も冷凍しようと思って多めに炊いてありますし…」
私の提案には今度こそ４人全員が目をキラキラと輝かせて
「いいの！？」
「迷惑じゃないっすか！？」
と言い出すので、むしろ一人だと絶対食べきれないのでそうしてもらえると逆に助かると伝えれば、皆ニコニコとしながら玄関を出てきてくれた。
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作者名：なちこ | 作成日時：2021年3月2日 4時
