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「ちょっと待っててください」
そう言って玄関前に彼女を残し部屋に入る
「おいキヨお前なあ……って、え？」
「飲み物買えてんじゃん！なんで！？」
すでに財布もスマホも忘れていったことに気づいていたであろう3人は、フジを筆頭に俺の手にしたビニール袋を見て目を丸くする。
「うるっせ！ちょっと待ってろ」
ビニール袋を乱雑に放り、テーブルの上に置きっぱなしだった財布を手に玄関へと舞い戻る。
ドアを開ければ彼女、Aさんは先ほどと同じようにその場で待っていた。
「これ、ありがとうございました」
「はーいたしかに！」
「え！？なにお前お隣さんに金借りたの！？」
彼女に金を返しているとドヤドヤと後ろから3人が出てくる。おい、やめろ、恥ずかしさが増すだろ。
「いや〜なんか、すいませんうちのが」
「こいつアホなんで」
「間違いないね〜！」
ちなみに上からこーすけ、フジ、ヒラである。お前ら後で絶対泣かすぞ。
「気にしないでください！さっきキヨさんにも言いましたけど、お隣さんですし困った時はお互い様ですよ」
そう朗らかに笑う彼女、その笑顔を見てどこか隣人と距離を置いていた3人は(というか、ついさっきまでは俺自身もそうだったのだけど)その距離を測りなおすことに決めたようだった。
「えっキヨだけ自己紹介し合っててずるい！」
「名前なんて言うんですか？」
「そういえばきちんとした挨拶ってフジしかしてなかったもんな」
堰を切ったように互いの自己紹介を始める3人を見て(合コンかよ…)と思った俺の横で、Aさんは本当に嬉しそうに笑っていた。
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作者名：なちこ | 作成日時：2021年3月2日 4時
