Ep.19 ページ19
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気持ちの良いお天気の土曜日。
「 あの...何でしょうか 」
「 ..気にするな 」
お遊戯会で使う紙製の冠を作っていれば、それをぼーっと退屈そうな目で見つめる高杉さん。
日当たりが良いからと言う理由だけで、共有スペースであるリビングのテーブルを占領する私が悪いけれど。
気付いたらいると言った具合で見かける程度の高杉さんとはまったく話をしたことが無いもので。威圧する雰囲気や、初日の朝の事もあり警戒が解けないが...
視線が園児よりも熱い。
「 もしかして折り紙好きなんですか? 」
「 別に 」
見詰める姿が可愛いなんて少しでもなめた私が悪かった。冷酷にも塩な対応にしょんぼりしていれば、今度は高杉さんが口を開く。
「 この黄色いやつはなんだ 」
「 黄色いやつって...王冠ですよ王冠 」
「 .... 」
「 なんですかその沈黙は!どーせバカにしているんでしょうけどこうやって被れるんですから 」
そう言って目の前に座る高杉さんに被せれば、
取ろうとせず、頭に乗ったその王冠を確かめるように触る。
「 お似合いですよ 」
「 そうか 」
違和感のある姿に笑ってしまうけど、真顔から表情を崩さないその人は、私の言葉にどこか誇らしげに腕を組んでみせる。
「 高杉さんって意外と面白いんですね 」
「 もっと距離のある方だと思っていました 」
神経質そうに見えるけど案外ただの言葉足らずなだけなのかもしれない。そう捉えれば、2人しか居ないこの空間は、最初の息詰まるものとは一変したように思えて、つい言葉に出してしまう。
あまり言われないのかピンと来ない様子の高杉さん。
変わらない表情を何とか読み解こうと睨めっこをすれば、異様な物を見る目を向けて入ってくる総悟君。
「 何してんだあんたら...ってあんたは本当何してんだ.. 」
「 王冠だ 」
「 は? 」
柄じゃない物を被り、真顔で説明する高杉さんに冷やかしを通り越した感情が出る総悟君。
「 んな的外れな黄色、本物の純金見せて参考にさせてやれよ 」
掴めない話をする総悟君に「あぁ」と普通の返事をする高杉さん。
意味がわからないと言った表情で2人を交互に見れば、総悟君が驚いた声を上げる。
「 え、お前知らねーのか? 」
「 高杉晋助つったら高杉グループの社長だろ 」
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時