十話 最善の一手? ページ10
母と兄と共に広場につけば、もうすでに人々と軽快な音楽であたりは賑わっていた。祭りの開会式でキャンドルに火を灯すので、他のものにはもう火がついている。私たちも自分のキャンドルに火をつけた。母は満足そうに笑っている。
「わたしはもうあっちのベンチに座って見ているわ。二人でご飯買ったり、踊ったりしておいで」
「うん。何か美味しそうなやつあったら持っていくね」
そう言って、母と別れ、私たちは広場の脇の道に並ぶ屋台を覗きながら歩いた。
「そういえば、お兄ちゃんお花持ってきたの?ダンスで渡すやつ」
今日の兄を見る限り、胸に指した一輪しか見当たらない。街の人との友好関係を築いて、お店の貢献にも繋がるのでいつもはそれなりに花を持ってきていたはずだ。
足りなくなった時のために祭りでお花は売られているが、ここで買うのだろうか?うちでは、母が趣味でやっていた花壇があったので毎年そこから持ってきていたし、母が病にふせていても兄が花壇の管理はしていたはずだ。
「ああ、一輪だけな。母さんはいいって言ったけど放っておくのもアレだからあまりダンスには参加したくなくて。それに、今年は非常事態だしな」
「……どういうこと?」
私が聞けば兄は含み笑いをして言った。
「お兄ちゃんは、ソフィーを守るための、お前の未来を守るための最善の一手を思いついたのだ!」
「……」
「聞いて驚くなよ……この祭りでオレはソフィーとだけ踊る。そして、ソフィーはオレとだけ踊る。そうすればお前の手元にある花は、お兄ちゃんの花だけになる。つまり……」
「……」
「お兄ちゃんとソフィーは将来的に結ばれるんだ!ソフィーをあいつから守れるぞ!」
「……はあ」
私は深いため息をついた。どうせろくな事じゃないと思っていたが本当にそうだった。だいたいあの話はただの噂話だし、さっきから兄の言っている『あいつ』とは一体誰なんだ。
「お兄ちゃんの言う『非常事態』がなんなのか知らないけど……私を制限するのはいいとして、お兄ちゃんはたくさん踊ってくればいいじゃない」
「お前にそんな不誠実なこと出来るわけないだろ」
この兄は正気でこんなことを言っているのか。少し前からいつにも増して過激になってきている気がする。私は彼と少し距離をおいて歩くことにした。
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
わ - 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時