九話 祭りの始まり ページ9
(本当に、静かだな……)
主人のいない伯爵家は、不自然なほど静かで、平穏だった。自分の日常が、どれだけ彼らと関わりが深かったかを実感してしまう。
今日の夕方からお祭りに行くので、少しはこの寂しさも紛れるだろうが、終わってからも彼らが帰ってくるまで時間がある。今でさえこんな状態で、雇用期間が終わった時にはどうなるんだろう。
(……もう少し、もう少しだけここにいてもいいか、お兄ちゃんに聞いてみよう)
△▼△▼△▼
「ソフィー!おかえり!!」
お祭りに参加する前に家によると、兄と母が出迎えてくれた。すり寄ってくる兄をかわして母の元へ行く。
「ただいま。お母さん、身体大丈夫なの?お祭り行けるって本当?」
「本当よ。ずっと椅子に座りっぱなしだろうけどね。せっかく自分のキャンドルだって作ったんだもの。ちゃんと火くらい灯したいわ」
中心街広場のキャンドルは領の住民の手作りだ。私も仕事の合間に作ってはいて、基本的に自分のものに火を灯すことになっている。
「そっか。でも無理しないでね」
「ありがとう、ソフィー」
「なあソフィ〜、お兄ちゃんを無視しないでくれよ〜寂しいよ〜」
「はいはい」
適当にあしらえば、余計に兄がすり寄ってくる。それを引き離し、すり寄られを繰り返す様子に、母は楽しそうに笑っていた。
「やっぱり、母さんもソフィーがいた方が楽しいわ。もうそろそろ領主様のお屋敷のお仕事も終わりでしょう?」
「母さんの病気もほぼ治ったようなもんだし、あんなやつのいるところにソフィーを置いておけないしな!」
「あ、そのことなんだけど……」
ポツリと、私はまだあそこで仕事をしたいと二人に伝えた。職場の人はいい人たちばかりで、仕事も楽しいから、と。案の定、兄は猛反対だった。
「ダメだ、ダメだダメだ!!一年だけって約束したじゃないか!」
「そ、そうだけど……お母さんは?」
「正直、ソフィーには帰ってきてほしいよ。ロイだけじゃいろいろ心配だし……ソフィーはあとどれくらいあそこにいたいんだい?」
「それは、わからないけど……」
その時、広場の方から華やかな調子のラッパの音が聞こえてきた。お祭りが始まる合図である。
「あ!もう始まったのか!とりあえず、この話はなし!ソフィーはちゃんと帰ってくるんだぞ!」
「え、そんな」
「祭りは全員参加だからな。早く支度するんだぞ」
「う、うん……」
結局、私の希望は通らないまま、お祭りが始まった。
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
わ - 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時