伯爵家は今日も騒がしい！４【オリジナル】

八話 出発 ページ8

慌ただしい数日が過ぎ、建国記念日前日となった。今日のうちに王都に到着し、タウンハウスに滞在するそうだ。
荷物を馬車に詰め終え、あとは出発するだけという状況になっている。

「なんでソフィアだけ留守番なんだよ〜！いっしょに来てくれよ〜！」
「私は夏のそれで十分です。だいたい、王城に使用人は入れないじゃありませんか」

にっこり笑いながら言えば、アルバート様はぶーと頬をふくらませた。道連れになんてしよう、だなんて、そうはいかないんだから。
夏の他家からの招待とは違い、今回は国からのものだ。下っ端の私が行けるわけがないし、ついていく理由もない。
ちなみに、エヴァンくんは今回も護衛としていっしょに行くそうだ。建国記念祭が終わってからも王都で婚約手続きがあり、その合間に、とルイス様から手合わせの申し出があったのも理由らしい。この二人、顔を合わせる度にどんどん強くなっているそうだが、それに合わせてどんどん仲も良くなっているみたいだ。
そんなわけで私は一人お留守番。と言っても明日の夕方あたりからルズベリー領の建国記念祭には出てきていいと言われている。……正直、寂しさを紛らわすにはちょうどよかった。

「ぶつくさ言ってないで、行くわよ、アル」
「うﾞ〜……行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」

クラリス様に引きずられるようにアルバート様は馬車に乗り込んだ。グレンさんがこちらを向いて会釈したので、私も頭を下げる。
もうすぐここを辞めることも言えなくて、グレンさんと他の使用人さんとの交流も十分にできていない。私はあと何日あの人達といっしょにいられるのだろうか。
彼らがいなくなった伯爵家はずいぶんと寂しく、静かに感じられた。

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