七話 お祭り ページ7
それからというもの、クラリス様はもちろん、アルバート様もグレンさんも、伯爵家の方々は皆大忙しだった。そういえばそろそろ建国記念祭だったな、といつもと変わらない業務をこなす下っ端の私はぼんやり思っていた。
建国記念祭はその名の通り、このベルデン王国が建国された日を記念した、国をあげてのお祭りだ。
王城では式典及びパーティーが開かれ、国中の貴族が集められるそうだ。ほぼ強制参加らしく、アルバート様もクラリス様もそれだけは毎年出させられていたらしい。
王都では王族によるパレードもあるそうだが、他の領地では建国当時からの伝統的な祭りが行われる。ルズベリー伯爵領では、中心街広場にキャンドルが炊かれ、祝祭のダンスを踊るのだ。ダンスは男女1組で踊るものであり、この国で生まれ育った人ならば小さい頃から身についているため、誰でもできるものだ。
それと、ダンスを踊ったあと、男性は女性に一輪の花を送るのが風習になっている。なんでも初代国王が建国時のパーティーでお妃様とダンスを踊ったあと、胸に挿していた一輪の花を送ったのが元だとか。ちなみに、もらった花の中で、最後まで枯れなかった花の送り主とは将来的に結ばれるという話もあるらしい。それほど明るくもなく、踊れば踊るだけたくさんもらうのだから、毎年どれがどれだかわからなくなるのだが。
そういえば、建国記念日に私たち使用人はどうするのだろう。屋敷の主が王都に行くとはいえ、誰もいなくなるのは……。
「……手が、止まってますよ」
「は、はい!……あ、お久しぶりです、グレンさん」
「お久しぶりです」
かけられた声の方を向けば、グレンさんが立っていた。なんだかこうして面と向かって話すのは久しぶりだ。休憩時間はおろか、お昼も会わなくなってしまっていたから。
「あの、今日もお昼は……」
「すみません。まだ仕事が……エマにいいように使われておりまして」
「あはは、お疲れさまです」
笑って返しつつも寂しさは残る。身分の差というか、立場の差というか。ほぼ下町庶民同然の私は、こういう時に彼らの力になれないことが少し寂しいのだ。
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
わ - 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時