伯爵家は今日も騒がしい！４【オリジナル】

十八話 次の日 ページ18

次の日の休憩時間、例のことをアルバート様に伝えれば、意外にも彼は沈んだ顔を浮かべるだけだった。前に勘違いされた時は泣きそうになりながら問い詰められたため、なんだか拍子抜けして逆に申し訳なくなる。

「家の事情なら仕方ないよな……せっかく仲良くなれたのに……」
「す、すみません……」
「謝ることじゃないって！ソフィアが辞めた後も店には時々行ってやるからまた会えるだろ！」

アルバート様は安心させるようにニッコリ笑った。その笑顔を見るとなんだか泣きたくなってしまう。次の発言でその感傷的な気持ちは吹き飛んでしまうけど。

「それなら、早くグレンに告白しないとなあ。いつにする？」
「ちょ、ちょっとアルバート様！誰かが聞いてたらどうするんですか！」
「人なんてほとんど居ないから大丈夫だろ」

建国記念祭兼クラリス様の婚約手続きでルズベリー家から人はほとんど出払っている。数少ない滞在している人たちで主人の不在時を回している状況だ。そして、変則的なスケジュールのせいでグレンさんの休憩時間は揃わず、こうして二人だけでお茶をしている。

「こ、告白しなきゃいけないですか……？」
「え？！ソフィア、お前伝えないまま、離れるつもりなのか？」
「だ、だって拒絶されたら耐えられませんから……」
「そういうとこ、意外と弱気だよなあ。ソフィアって」

だって初めてなのだ。こんな気持ちになるのは。満たされているようで、どこか少し怖いような。
それでも、伝えないまま終わらせてしまうのは嫌だという気持ちもある。

「……じゃあ、ここを出ていく日に言うことにします。気持ちの準備もしたいですし」

少し悩んだ後、覚悟を決めてそう言えば、アルバート様は『頑張れ』と言って笑った。

十九話 前夜→←十七話 静寂の中で

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す