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十七話 静寂の中で ページ17

その後、兄とは無事合流し、いつもの調子でなんやかんや言われた。『約束を破るなんて』とか『おでこは大丈夫か』とかそんなことだ。私は、兄がグレンさんと遭遇することを避けるため、母も連れて早々に帰宅したのだった。

「……あれ?」

そしてお祭りも終わり、すっかり暗くなった道を歩いていると、見覚えのある人が向こうからやってきた。明日から普通に業務に戻るため、実家には泊まらず、兄を振り切って伯爵家へ帰るところだった。

「グレンさん!こんな遅くにどうしたんですか?」
「あなたこそ、こんな夜遅くに一人で出歩くものじゃありませんよ。アルバート様を寝かしつけてから、あなたがまだ帰ってないと聞いて様子を見に来たんです」
「それは……すみません。ご心配をおかけして」
「かまいませんよ」

静かな夜の道を二人で並んで歩く。王城での式典のことやらアルバート様の様子やら他愛もないことを話した。路上に人はひとりもおらず、完全に二人っきりだ。そのことを意識すれば、心臓の鼓動が大きく、早くなる。

(そうだ。今こそあのことを言うチャンスじゃない……!)

私は少し震える声で話しかけた。

「あの、グレンさん……私、ずっと前から言おうと思っていたんですけど……」
「……なんですか」

少し声を固くして彼は聞き返す。

「私、もうすぐここを辞めるんです。元々そういう契約で……」
「……」

二人とも自然に歩みを止めた。なんだか気まずくて目を合わせられない。

「仕事も楽しくなってきて辞めたくはないんですけど……」
「じゃあ、辞めなければいいじゃないですか」
「……家族に相談したんですけど却下されてしまって。家の事情でここで働いていたんですが、その問題も解決しましたし」
「そう、ですか」

沈黙が流れ、グレンさんは再び歩き出した。

「そのこと、アルバート様たちには伝えたんですか」
「……伝えてません」
「早めに言った方がいいですよ。あとで恨まれますから」

彼はこちらを振り返らずにそう言った。私は小さく『はい』と返事をするしかなかった。

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設定タグ:使用人 , メイド , 貴族   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
- 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時

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