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十五話 事の真相一 ページ15

気づけば曲が終わっており、私たちはダンスの輪を離れた。

「すみません。何度も足を……痛みませんか?」
「大丈夫ですよ。ダンス、楽しかったです」
「あれで、ですか?……おかしな人ですね」

グレンさんは怪訝そうに声を上げた。でも本当に楽しかったのだ。特別な日に彼と踊れるなんて、こんな機会はきっと最初で最後になるのだから。
二連続で踊ったこともあり、身体の火照りを感じて扇いでいると、グレンさんが花を差し出してきた。

「……これを、どうぞ」
「ああ、ありがとうございます……あれ、これ何色の花なんですか?」
「黒……らしいですけど明るいところで見ると少し紫がかってるんです。あなたの瞳の色と似ていたので」
「へえ、珍しいですね。どこでこれを……って、あ!そういえば、どうしてグレンさんここにいるんですか?!パーティーは!?」

聞かなければならないことを思い出してそう聞くと、グレンさんはいつもと変わらぬ調子で答えた。

「抜け出してきました。領地の祭りに参加したいと急に言い出して。アルバート様はまだ成人していないので原則では式典まで出席すればいいんです。まあ普通はパーティーにも参加するんですけれど」

パーティー嫌いのアルバート様だ。抜け出す可能性は大いにあるだろう。

「あれ?でも式典に出席してからじゃ、時間的に帰って来れませんよね?」
「馬車でなら、ですけど。馬に乗って駆けてきました」
「お二人とも乗馬できるんですか!?」
「ええ、まあ。馬はなぜかルイス様が手配してくださりました。花も公爵家のタウンハウスから持っていってよいとおっしゃって……なぜここまでしてくださったのか自分にはわかりませんが」
「それでこんな珍しい花を……」

グレンさんの話を聞いて、私の頭にはクラリス様の姿が過ぎった。憶測だけれど、きっとこれはクラリス様の力添えもあったのだ。そうじゃなきゃ婚約者の弟のワガママに、公爵家が馬を貸したり花をくれたりするわけがない。

(……クラリス様が帰ってきたらお礼を言わないと)

私はそっと、黒い花の花弁を撫でた。

十六話 事の真相二→←十四話 祝祭のダンス



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設定タグ:使用人 , メイド , 貴族   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
- 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時

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