. ページ10
ちょうど曲がり角に差し掛かった頃、ひとらんに大人しく撫でられていたAの顔付きが突然変わり、トントンの前へと躍り出た。
ガッ、と固いものがぶつかり合う音がする。
二人は驚いてAが相対した相手を見ると、先程まで気配のかけらもなかったゾムが殴り掛かった体勢のまま、フードの下でにぃと笑っていた。
「ヒ、ヒヒヒッ！おもろいなぁ、こいつ。
俺の殺気に気付きよったで！」
「ゾム！お前どこから、」
現れたんや、というトントンの言葉は不自然に途切れる。
我々軍の中でも隠密を得意とするゾムは、ダクトさえあればどこからでも現れるからだ。
現に上を見上げると、しっかりと閉じられたダクトが目に入る。
十中八九、ここから飛び降りてきたのだろう。
ゾムの拳を受け止めたAは、全ての感情が抜け落ちた顔でゾムを見遣る。
「ご主人に仇なすものは排除します」
「ふひひ、な、なぁ、俺と遊ぼうや」
「待て待て待て待て！ここでやりあうな！」
こんなところでゾムに暴れられたら、ここら一帯に瓦礫が積み上がることになってしまう。
そんな事に資金も人員も割けないと慌ててゾムを止めた。
AはAで、ひとらんに抑えられながらもゾムを見る目は鋭い。さっきまでにこにこと笑っていたのが嘘のようだ。
「Aも、待って。こいつはゾム。
俺たちの仲間だから」
「ご主人に敵意を向けました」
「なぁ、俺と遊ぼうや！」
「ゾムはややこしくすんな！」
なんとかゾムの発作を抑え、Aと向き合って渾々と説明する。
「ええか、ゾムは、仲間。
はい復唱」
「ゾムさんは、仲間」
「せや。遊ぼう言うてこうやって襲いかかってくるけど遊びやから。
殺気も出してくるけど、俺らに対しては遊びやからな」
念には念を押してAに説明する。
ゾムへの説明はひとらんに丸投げした。
「にしてもA、よおゾムの殺気が分かったな。
俺らよりも早く反応しとったやろ」
「元々武器なので、そういうのには敏感かもしれません。
ご主人をすぐ守れないと懐刀にはなれませんから！」
「あーうん、せやな」
「なぁなぁ、また手合わせしようや」
「ご主人、いいですか？」
「まぁ、ええんとちゃう？
ただし、場所は弁えてや」
「はい、ご主人！」
「…幻覚かな、尻尾がぶんぶん振ってるように見えるんだけど」
「安心せぇ、ひとらん。俺も見えたわ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 45人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハコ(プロフ) - 弥生夏さん» コメントありがとうございます。こういったタイプの主人公くんを動かすのは初めてなので、とても嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2020年6月28日 0時) (
レス) id: ad61983e44 (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - かっわいい！高評価あと50回くらい押したい！更新頑張ってください！応援してます！ (2020年6月26日 7時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハコ | 作成日時：2020年6月20日 0時
