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イレギュラーはあったが、なんとかひとらんの自室に到着した三人は、入室を促される。
手入れ道具一式を持ち出したひとらんはトントンに一から丁寧に説明した。
「とまぁ、こんな感じかな」
「…思ったより難しいな」
「慣れればすぐだよ。
とりあえずやってみたら?」
勧められるまま、懐にしまっておいた煤けた刀身を取り出す。
Aを見ると、期待を込めた目でこちらを見ていた。
「…A、あんまり見られると緊張すんねんけど」
「大丈夫です、ご主人!
さっそくお願いします!」
「まぁ、うん、頑張るな」
ひとらんに言われた手順通りに、と言っても刀身しかないので柄と鎺を外すことは省略するが、煤汚れている箇所を拭い紙で丁寧に落としていく。
何度も紙を替えて拭うも、やはり焼けてしまった刀身は元の輝きを取り戻すことはない。
不安になってAの方を見るも、構わず続けてくださいと目線で訴えている。
続けて打粉を手に取り優しく刀身に押し当てた。
逆側も然り、ぽんぽんという音だけが静かな部屋に響く。再度拭い紙で丁寧に拭い、もう一度打粉を押し当てる。
すると、煤けていた筈の刀身がぼんやりと光だし、その光は徐々に強くなりとうとう刀身全体を包み込んだ。
拭い紙でその光ごと包み込むようにすると、ゆっくりと光が弱くなり、完全に消える頃には煤けていた刀身は鈍色の輝きを取り戻し、控えめでいて立派な拵えの鍔に柄、更には鞘までもがトントンの手の上に乗っかっていた。
驚いてAを見ると、嬉しいという感情が全面に現れて、愛おしいものに触れるように短刀に手を伸ばす。
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ハコ(プロフ) - 弥生夏さん» コメントありがとうございます。こういったタイプの主人公くんを動かすのは初めてなので、とても嬉しいです。ゆっくり更新になりますが、気長にお待ちいただけると幸いです。 (2020年6月28日 0時) (レス) id: ad61983e44 (このIDを非表示/違反報告)
弥生夏(プロフ) - かっわいい!高評価あと50回くらい押したい!更新頑張ってください!応援してます! (2020年6月26日 7時) (レス) id: 2f1398aac7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハコ | 作成日時:2020年6月20日 0時