【文スト】大人びている少女、武装探偵社にて奮闘中

十四話 人生万事塞翁が虎 ページ16

敦は、必死に流れる涙を拭う

敦「Aちゃ…」

敦が言い切る前に、Aは、敦に近付き

敦「…！」

敦の頭を撫でた

A「もう貴方は、解放された。もう貴方を苦しめる人も居ない。もう大丈夫です」

と、微笑み乍ら言う

敦「ありがとう…Aちゃん」

A「誰にも、人の生死を決める権利も、方法もありません。これは、貴方の人生なんですから」

太宰(…Aちゃんは…本当に…)

暫く心地よい雰囲気で、静かに待機していた三人だが唐突に太宰が立ち上がる

太宰「却説…そろそろかな」

A「…」

Aも閉じていた目を開け、一点を見つめる。すると

ガアァァァァン！！

倉庫の奥から何かが落ちる音がした、それを聞いた敦は座っていた箱から落ちる形で降りた

敦「えっ…う、うわっ！い、今、奥で物音が…」

敦が太宰とAに怯えた様子で訴えた。だが、二人は一切気にせずに

太宰「そうだね」

のんびりと答える太宰、その様子に敦は

敦「き、きっと奴ですよ！太宰さん！Aちゃん！」

A「いえ、風で何か落ちたんでしょう」

月を見たまま答えるA、だが敦は二人の言葉を聞いても尚、取り乱した様子で叫ぶ

敦「人食い虎だ！僕を食いに来たんだ！」

太宰「落ち着き給え、敦君」

パタンと、本を閉じると敦に視線を合わせる

A「そうですよ、敦さん」

Aも太宰と同じように敦に目を向ける

太宰「虎はあんな所からは来ない」

さも、虎が何処から来るのか分かっているように言う太宰に敦は

敦「どうして分かるんですか！」

声を荒げて食ってかかった。しかし太宰は、そんなのに怯む筈も無く

太宰「抑も変なのだよ」

敦「え？」

予想外の言葉に敦も困惑する、そして太宰は、追い討ちを掛けるの様に話し出す

太宰「経営が傾いたからって、そんな理由で、養護施設が児童を追放するかい？大昔の農村じゃないんだ。そうだよね？Aちゃん」

最もな言い分だった。敦も、その言い分にタジタジになる。そして、Aも口を開く

A「経営が傾いたのなら、一人二人追放した所で如何にもなりません。半分位減らし、他所の施設に移すのが筋です」

太宰が、木箱から降り、敦の前に降りる。そして、敦はAの言葉で更に混乱していた

敦「な、何言ってるんですか？太宰さん…Aちゃんも…」

混乱し、後退り乍ら二人に言う敦。その後ろには月が爛々と輝いていた。

十五話 人生万事塞翁が虎→←十三話 人生万事塞翁が虎

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す