SPARC

宵闇……（s） ページ21

二人の様子を見ていたら
全てが真実だって
思い知らされたようで

視界が揺れた気がした


［ガッチャン！……こんなとこで何してんの？］

｛……千さん……ニカ……待ってるの……？……ちょっとまだ来ないかもッ。グフッ！｝

玉が宮田の脇腹にチョップ入れた……
あっさりニカの名前がでたことで……
やっぱり二人もミツとニカの事
見たんだって思った……

凄く複雑そうな顔した宮田と
少し怒ってるみたいな玉の瞳の色が
見たくない現実を
見せられた事の裏付け

取り繕った笑顔が
みるみる歪んでいく

【ニカがね！……お気に入りのキャップ…楽屋に忘れたんだって！……待っててって言われたんだけど…用事思い出したから帰る！悪いけど……ニカが来たら伝えてくれる？ゴメン！！！】


クルリと背を向けて
二人の返事を待たずに
歩き出す……

｛あ！ちょっと！千さん！俺らももう帰るッ……グフッ！｝

［わかった！伝えるから！……］

玉が珍しく大きな声で叫ぶように
返事をするのが聞こえた……





お腹の奥から
ゾワゾワと不快な痺れがせりあがってきて
胸いっぱいに広がって……

呼吸がままならない……


それに比例するように
歩幅は広がって……たまらず

人もまばらな
町並みを
走り出した



苦しいのは
走ってるからだ！
バカみたいに
走って
走って



いよいよ心臓が痛いくらいになって……




トボトボと歩き出したとき


ふと見た足元のアスファルトに大粒の雨が

一粒……二粒と
黒いシミを落とす



雨？



立ち止まり

振り仰ぐ空は
夕暮れと夜の交差する
夜の色合いの濃い
コントラストで……

星が一つだけ瞬いて
やがてそれが

滲んでは
見え……

滲んでは見え……と繰り返す……



アスファルトには
黒いシミが増えて


それは時間とともに

回りの空気に紛れて見えなくなった








高嗣…


高嗣……




もう動けない……





早く迎えに来て……

迷子。（y ）→←疑い……（s）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す