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「うわっ!」

思わず君の腕を掴んでよろけて

辺りを巻き込んでつく尻餅

派手な音が鳴り響いてすぐに戻る静寂

巻き起こった風で再び閉まるドアで我に帰る

傍らの君は唇を尖らせて僕を睨む

「痛っ…もうビビるくらいならこんな所来んなよ」

「いきなりドアが開くのが悪いんだって!びっくりしたぁ」

「誰かいるのかもよ?鍵のかけ忘れかな?」

「取り敢えず覗いてみる?」

君を引き上げて付いた砂埃を払うと

僕は何の躊躇いもなく中へ入ろうとした

今度は君が僕の腕を掴む

「待って!勝手に入ったらやっぱりまずいんじゃない?」

「大丈夫だって!誰かいるならもう出て来てるだろうし…もしかしてオバケかもしんないし」

「さっき尻餅ついたくせにまだオバケが気になるの?」

「あれは不意打ちだからついちゃったの!目的はオバケなんだから!」

戸惑う君に虚勢を張るつもりで

力強くガッツポーズして

勢いよく扉を開けばオバケの姿は無く

広がるのは物が詰め込まれた雑多な空間

これは運動会の玉入れ

こっちはカラーコーンに掃除道具

何の用途か解らない謎のネットもある

そして黴なのか、土なのか、両方なのか

色々と入り混じった不可思議な臭い

良い匂いとは程遠いのに何故かワクワクする

RPGのダンジョンに入ったみたいな気分

興味無かった筈の君も

好奇心丸出しで小屋を見回していた

「いろんな道具があるね」

「運動会のが多いね。うわぁこれ大玉だ!空気入れないとこんな感じなんだ」

ぺったんこな状態なんて僕 初めて見たよ

その形状が面白くて広げて遊んでいたら

不意に君の気配が消えた気がした

えっ?何処行った?

暗がりの中を見渡せば

君は反対側の壁の一点を見つめていた

「どっどしたの?なんかいるの?」

君は僕の言葉に答えず微動だにしない

聞こえないのかと何度も声をかけるけど

やっぱり黙って壁を見つめてる

いや…声は発してないけど

口元は僅かに動いている

それは呪文を唱えている様にも

誰かと会話している様にも見えて

背中にぞわぞわっと何かが駆け上がった

なるべく見ない様にしていた僕も

恐る恐るそっちの壁を見た

ん?えっ?白い?

あの辺ぼんやり白くない?

…まっまさか…オバケ?

思わず君の後ろに隠れて聞いてみる

「…なんか見えてる?」

「これを見に来たんじゃないの?」

「まっ…まぁそうなんだけど…」

でもさ…いざとなったら怖くない?

だってオバケだよ?

怖いのだったら…やっぱり嫌だ


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作者名:青山白樹
作成日時:2021年1月11日 10時

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