判決を言い渡される ページ40
「ハ、ハハ…。大概にしといてや。俺は断罪者や。妄想を外に発信するのは愚か者のすることや。
やめといた方がええで？」
チーノが顔色を悪くしながらもグルッペンの言葉に反論した
口では否定しているが、粒状に溢れ出る汗が、滴り落ちる
呼吸が浅くなり、減った酸素を求めるように荒い呼吸になる
「ぐ…、お、れは。…クソッ！俺はッ！」
ひどい頭痛がチーノを襲う
理性と自らの気持ちが相反することを理解した瞬間、脳がキャパオーバーに陥ったのだ
何をしたいのかが分からなかった
どうすればいいのかが分からなかった
分からないから、チーノは手を伸ばした
それを、受け取ってもらえなかった
グルッペンが言ったように、友人になりたかった対象である人物に
一気に、暗闇に突き落とされたような感覚がチーノを襲った
ゴールデンイエローが、光を失う
北極星を、見失う
独りぼっちになったのだ。独りになってしまったのだ
「嫌だ、俺は中立の立場に居るんだ！絶対的な立ち位置に居るんや！
独りになる？違うッ！人間はいつも独りや！誰とも、分かり合えない。
だから、争う。だから、生を求める」
「…。じゃぁ、貴男は死ぬの？この世界に…いいえ、人間に絶望して死んでいくのですか？」
ゆっくりと、グリムがチーノに近付いていく
それを止めに入る人物が数名
無視して、グリムは突き進む
危険を顧みず、独りを愛し、独りに誰よりも怯えた青年を救済するために
「よく頑張りました。よく耐えました。私は貴方を許しません。そこは変わらない。
でも、認めようと思います。貴男には一つの事を信じ、貫き通す覚悟があります。
軍曹を処刑したことを後ろめたく思っているのならば、貴女は正しい人なのですから」
チーノに対する言葉は、少し荒かったものから丁寧なものに変わっている
グリムは心を許したのだ
むしろ、尊敬に値する人物と見て、敬う心が芽生え始めている
小さく震えるチーノを、抱きしめた
「！？離せッ！俺は、お前を殺してやる。離せッ…！」
言葉とは裏腹に、チーノは瞳から涙をこぼす
「いい加減認めたらどうなんや。チーノ」
蒼い瞳がチーノを見透かすように細められた
それを見てチーノは嬉気に、文句を言う
「今更、遅いんやて。軍曹」
パチリ、とグルッペンが瞬きをもう一度すると瞳は紅色になる
しかし、お構いなしにチーノは言葉を発した
「俺は、罪を一生かけて償うよ。軍曹」
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