縁結び ページ30
「どう、しよう」
グリムは考える
会議室にトントンを取り残し、グリムは廊下に出ていた
しんぺい神とオスマンに能力を伝えたことを報告したほうが良いのだろうか
もちろんそちらの方が良いのは分かっているが、
グリムは伝えたくないのでそんな事を自問自答する
意味もない自問自答をして、いざという時の逃げ場を作る
(あぁ、嫌になるなぁ。トントン様の優しさにも甘えてしまったし)
そう思い、その場からそそくさと立ち去って自室へと戻る
＝グリム、やっと見つけた＝
脳内に直接声が届く感覚
それとは別の理由で吐き気を覚える体
一人になった時を見計らったかのようなタイミング
「わ、たしは貴男を知っている？懐かしいよ。誰？誰なの？」
＝今は思い出したらアカンで？ヒントは君達の知り合い。ゾムが来たから、またね＝
「待って！私は貴方を知っている！あの石レンガの建物の人。思い出せないよ…」
がこん、と音が鳴り、ゾムが天井から降りてくる
いつもの光景
だが、グリムは今、‘何時もの彼女’ではなかった
「グリムー遊んでや。暇なんやｔ「私は、帰らなきゃ。何処に？私の居場所は何処？」ッは？」
グリムの異常な発言に、ゾムは首をかしげる
主語とその後の言葉がチグハグな言動
それは壊れてしまった人間の言動
「ぐ、んそ」
グリムの瞳が大きく広がった
今にも駆けだしそうな勢いで身支度を始め、部屋から出ようとする
「ッ！待ってや！」
それをゾムが止める
直感的に、グリムがもう戻ってこないと、そう感じたからだ
腕を手繰り寄せ、抱きしめる
何処にもいかないようにと抱きしめる
「離してくださいっ！私は、軍曹に。私の恩人に、私が愛した人に、会いに行かなきゃいけない。
ここは私の居場所じゃない！！」
ゾムを突き放して、グリムは走り出した
走って、足が千切れそうなぐらいに走って、そんな途中に二人の顔が浮かんだ
オスマンと、しんぺい神の顔
唯一無二と言って良い程の親友の顔を思い出したグリムはその場で立ち止まる
体は走ろうとしているのに、頭ではそれを止めようとしているのだ
(私はどうしたいの？軍曹に会いたいんじゃないの？謝りたいんじゃないの？)
瞳に涙が浮かんでいる
そして、次々に出てくる我々国幹部の顔
グリムは意識を手放した
「…迎えに来ましたよ」
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