Episode37 ページ38
ふと冷静になり、考え直す。Aの状況はともかく、ルシフェルの力とは信じられずにいた。
「反応は北か…だがどうせ戦略か計算なんだろう?俺など行っても無意味――」
「……」
「……」
ルリアが小さく声を漏らす。さきほどルリアに言われた言葉を思い出し、考えを改める。
「蒼の少女、ルリア―――フン、いいさ、今度こそ真に認めさせてやる。いつまでも、アンタの掌の上だと思うなよ…!」
Aを背負い、神殿を歩き回る。だが、意図せぬ権限によって体はとてつもなく重く、足元がおぼつかずにいた。さらに、Aの体重がのしかかり、歩くことが徐々に困難を極めていった。それでも、ルシフェルの気配をたどり、神殿の長い回廊を進んでいた。
「はぁ…はぁ…この先の扉か…?もう気配を読み取る力もないな…」
ようやくたどり着いた扉の前でAの顔を見る。表情もなく、眠ったままのAの顔は、生きているのか死んでいるのかすでにわからなかった。
「なんのつもりか知らんが、ずいぶんと胡乱な真似を――ウッ!?」
小石に足を取られ、視界が揺らぐ。とっさにAを庇ったが、その反動で自らを柱に打ち付ける。
「フ、フフフ…ただの小石で転がり回るとは…」
姿勢を戻そうとするが、もたれかかった柱が崩壊し、石片に押しつぶされる。
「ぬ、うぅ…Aは…無事か。ハハ、ハ…無様だ、あまりにも…アンタが見たかったのは、この光景か?…クソ!」
拳を握りしめ、Aをもう一度背負い直し、ゆっくりゆっくりと一歩を進める。扉の中に入り、あたりを見回す。
「来たぞ、ルシフェル…この騒動の目的を教えてもらおうか。そして、Aのこの状態を…!」
呼びかけるが反応はない。
「うん…?誰もいない…?ここではなかったのか…あるいはすでに移動したか…フン、馬鹿馬鹿しい。やはり関わるんじゃなかったな」
別の場所に行こうと背を向けられると、突如声が響く。
『誰か…』
「…?」
消え入りそうな声に耳を傾ける。聞き覚えのある、聞きたかった声に、思わずあたりを見回す。
『誰か…そこにいるのか…』
「この微かな思念…まさかアンタなのか…?」
弱弱しい思念をたどると、そこにはルシフェルがあった。―――ルシフェルの首が。
「ルシフェル―――」
サンダルフォンの目には確かに残骸が移る。無意識のうちにルシフェルに歩み寄り、Aを静かに横たえると、何かを考えるより先に、床に膝をつき、首を胸に抱いた。
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年3月3日 20時