Episode34 ページ35
あの日の災厄を思い返すサンダルフォン。どう考えても、ルシフェルの考えは理解できなかった。
「天司長の意図は…俺ごときが推測しても無意味だ。だが、俺は納得しているよ。審判を気取って空を壊そうとしたんだ。君達にもすまないことをした。どんな罰でも受け入れるさ」
Aと過ごす中で、いかに愚かなことをしたのかは理解した。だが、それでも自らの役割が捨て駒だったということに納得できずにいた。グランたちに心にもない言葉を紡いだのはAとの生活で心境が僅かにでも変化していたからかもしれなかった。そして、サンダルフォンの言葉にビィは驚きつつも、思ったことを素直にのべた。
「お、おぅ…でもよぅ、すまないで済む話じゃねーんじゃねぇか?」
「…」
「だろうさ…だからどんな罰でもと…」
「罰、ったって…なぁ…」
「………」
「………」
長く沈黙が続く。ここでサンダルフォンに罪を問うても、罰を受けても誰も報われない、ただ不毛な問答になることを全員が理解していた。まわりの景色がより一層、不毛さを際立たせ、耳を痛めるほどの静寂に包まれていた。ふと思い立ったことをサンダルフォンは口にする。
「…ああ、ところで」
「は、はい?」
「天司長が危機だと言っていたな?あの彼が滅びるとは思えないが…それに、Aも向かったみたいだし、そんなことは想像できないな」
「…え?Aさん?」
意外な名前が出てきたようで、一向に驚きとわずかな喜びの混じった表情が浮かぶ。
「そうだ。とりあえず脱出方法が見つかるまで、ここを拠点にして貰って構わないよ。この空間には時間が存在しないんだ。たまには寛いで英気を養ってみては?」
「時間がない?ちょっとよくわかんねーけど…」
「いつも何をして過ごしてるんですか?」
「はは、別に何も。ただ珈琲の木々を育てている。実がなったら収獲して、焙煎して抽出して淹れて飲む。何年か何十年か、あるいは…ずっとAとそうしていた。時間が存在しないのに何年というのもナンセンスだが…Aがそういうのでね。とにかくそういう所だ」
Aの顔を思い出し、小さく笑う。
「おいおい…ずっと繰り返してるってのかよ?そんなの頭が変になっちまうぜ」
「フフフ、何を気にしている。加害者の心配なんてどうかしているぞ?…おっと、Aに怒られるな」
「心配っていうかよぉ…もちろん災厄のことは許せねぇけど、なんか神妙で調子が狂っちまうぜ」
「………」
43人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:御煉 | 作成日時:2019年3月3日 20時