Episode33 ページ34
(…なんか最近、落ちことが増えたな)
なくなりかけた意識の中で、ぼんやりと考える。仕留め損ねた相手のことすら何も考えられないほど、思考がままならない。ただ、一つ浮かぶのは約束。
『また三人で珈琲を…』
ルシフェルの力を無理やり引き継いだ時に記憶が流れ込む。ルシフェルの願った願いがAを結果的に安定へと導く。
(けど、ここまで力使い果たしたらさすがに…もう万策尽きたなぁ)
ふと、何かを思い出し手にとってみる。
(これは…)
サンダルフォンが災厄を起こしたときにしたがえていたヴァーチャーズの欠片にあるコア。人間たちにこれ以上害をなさないよう、完全に機能を停止させようと思って忘れていたものだった。
(…死ぬなってか？あいつを一人にさせないって誓ったのは…僕だ。天司長を支えるのが僕の役目なら…)
コアを握りしめ、強く願う。
「あいつと一緒にいるんだぁぁぁあああ！」
ありったけの力での願いに呼応するかのようにコアが光る。やがて、わずかな力をAに与えて消える。
「カナンまでなら…戻れる！」
力がなくなる前に、カナンへと飛び、なんとか戻る。だが、狭間を浮遊している間に時間が狂ったらしく若干の時が過ぎていた。
「あいつの…ところに…」
繭のもとに駆け寄るが、そこで力尽きてしまい、もたれかかる形となってしまう。
「なんか…中が…賑やかだな…」
完全に途切れた意識を戻すすべがなく、目を閉じてしまう。
(…なんなんだ、こいつらは)
Aを見送ったのち、珈琲を育てるための水を汲んでいると、突如特異点たるグランたちが現れる。
「驚いたな…ここに人が来るなんて。Aじゃないな…どこから来た？うん…？」
「んなッ！お、お前は…！？」
「…！サ、サンダルフォンさん…！？」
「き、君等は…！いや…立ち話もなんだ、ついてくるといい」
Aと過ごした住処へとグラン達を案内する。どうやってここに来たのかと尋ねると、容量の得ない答えが返ってきた。
「カナン？不思議な繭に引き込まれた？…わからないな…その羽が何かの扉の鍵といったところか」
サンダルフォンの答えに一行は肩を落とす。。
「お前でもわかんねぇのか…元の場所に変える方法はどうだ？」
「それもわからないが、探せば出口はあるかもしれないな」
「探せば…？サンダルフォンさんは、探した事ないんですか？」
「ないよ。あの後、目を覚ましたらAとここにいた。巻き込んできたようだったからね」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年3月3日 20時
