Episode28 ページ29
「僕は…お前と一緒じゃない世界は嫌だ。けど、ルシフェル様のいない世界も…」
「…ならば、早く出ればいいだろう」
「なんでだよ!お前のいない世界だって嫌だっつってんだろ!」
「…君も物好きだな。確かに…俺も君には甘いらしい」
「…は?」
サンダルフォンは、珈琲の木に近づくと赤い実をひとつつまむ。
「…この赤い実をそのまま食べるのを見つけたのも君だったな」
「…?あぁ」
「本当は、君の羽を奪っていれば失敗することもなかったのだろう。四大天使など狙わずに…君なら騙してでも羽を奪えたんだろう」
「…」
サンダルフォンの顔が自虐気味に笑う。ゆっくりとAに歩み寄る。
「それはできなかったがな。再会したときはなぜか2枚羽になってたし、いつの間にか…役割も得ていたみたいだからな」
「役割…か。ウリエルに言われたんだ。自分で見つけちまえって。だからミカエルに仕えることにしたんだ。それで…特異点と行動して、パンデモニウムを鳴動させないために動いてて…」
「そうか…では、君はどうする?俺はここで珈琲を育てながら生きるぞ」
「どうしても、出る気はないのか」
「ないね」
即答したサンダルフォンにAの顔は悲しげになる。だが、すぐにAも決意したように顔をあげる。
「…なら、僕も残る。ルシフェル様にはミカエル達四大天使や、特異点たちもいる」
「なっ…」
Aの言葉にサンダルフォンが驚く。
「なぜ俺にそこまでこだわる」
「なんで…だろう。たぶん、一人じゃないって言いたいんだよ」
「今言えばいいだろう」
「言っても聞かないだろ」
「ふん、お前も人間らしい考えをするな。蒼の少女も俺を犠牲者だと言っていた。殺されかけたのにな」
「お人よしの集まり…だからな」
自虐気味に笑ったAの顔は懐かしんでいた。
「…覚えてるか、A。昔、研究室で初めて会ったことを」
「あぁ、あれは確か僕の体で回復力のテストをしたときだったか?」
「君は腕を切られ、足を捥がれても無表情でそこにいた…痛がらず、何もないかのようにそこにいた」
「そりゃ…なれてたしな」
「俺は…そんなお前を見てひどく恐ろしかった」
「…へぇ」
「お前の羽を初めて見たときは驚いた。真っ白な六枚羽だったときは、素直に嫉妬したよ。天司長と同じように力を持っているのか、とね」
「ま、実際はスペアとして作られた挙句に失敗だったわけだが…それがどうしたのさ」
「…お前は、なんでそこまで」
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年3月3日 20時