Episode23 ページ24
Aのもとにかけよると、そばにはサンダルフォンもいた。Aは意識を失っていたが、穏やかな呼吸を繰り返していた。
「終わりだ、サンダルフォン。貴様も目論見は完全に潰えた」
「……」
地についたサンダルフォンをミカエルがにらみつける。
「ガブリエル、背の傷の治癒を」
「ウフフ、どうも。ひとまず形は復元したけどね」
「このサンダルヤロウ…テメェ、相応の覚悟は出来てんだよな？」
ウリエルの問いに、自虐的にサンダルフォンは笑う。
「あぁ、勿論だ…自分でも不思議だよ。なぜここまで暴虐を振るったのか…研究所に軟禁されて育ち、檻に封印されている間に、魂が淀み切ってしまったんだろう…本当に惨めな男だ、俺は。役に立たぬ捨て駒という宿命に、最悪の手段で抗おうとするなんて…」
「…」
「うん…？そうしたんだ、ルリア？」
「あ、あの！四大天使さん！サンダルフォンさん！」
「蒼の少女…？」
「役にたたない、とか…その、ちょっぴりわかります。サンダルフォンさんはずっと、ルシフェルさんの役に立ちたかった。でも、星の研究者さんのせいで、そういうのが踏みにじられたというか…簡単には許せない、ですけど…もしかしたらサンダルフォンさんも、星の民の犠牲者なのかもしれません」
ルリアの訴えに、団員は深く考え込む。
「そっか…ルリアはアイツの記憶を見たのね？」
「犠牲者…？奇妙な考え方をするんだな、貴様は」
「だが、どうする？このまま無罪放免とはいかねぇだろ」
「そうね…最終的には、天司長様の判断によるわ」
「わかっている。その時はいかなる処罰でも受けよう。…グラン、最後に俺と握手してはもらえないか？赤き竜と蒼の少女を束ね、四大天使にも認められた君には、最大限の敬意を表させてほしい」
「いいよ」
「…ありがとう」
グランのもとへ歩み寄り、手をとる。そして、静かに顔をよせ耳元で何かを小さくつぶやく。
「…華奢な指だ。君自身に自覚はないだろうが、世界は君を中心として動いている。進化を加速する『特異点』として。話せてよかった、よい旅を」
瞬間、サンダルフォンはグランを空の底へと突き落とす。突然の出来事に、全員が遅れて反応する。
「な…！？」
「フハハハハハ！あっけない、あっけなさすぎる！いかに力があろうとも、所詮が人間に過ぎない。その身である事自体が最大の欠点だ―――…ッ！」
「貴様…！ウリエル、追うぞ！」
「間に合うか…クソ、間に合わせるしかねぇ！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：御煉 | 作成日時：2019年3月3日 20時
