望むことがあるならば ページ28
青side
ゆっくりと顔を上げると、鼻息荒くきっぱりと言いきるA。バッチリ目が合うと、今度はふんわり微笑んで『ありがとう』言われた。
「なぁ…なんで、そんな言葉俺にくれるん？」
『え？』
「ありがとう、なんて…」
はじめ見たときは驚いたけど、どうせ染めるんやったら頭ん中に思い描いてた色にしたい。
自画自賛したくなるくらい、目の前にいるAは思い描いていたそのもので。ああ、やっぱり似合うなぁって納得する反面、言葉足らずで行動に移してしまったことを悔やんだ。
『だって…染めてくれたの、嬉しかったから』
アイツだって、今日ここに来るまでにいろいろ考えているはずで、もしかしたら、別れるつもりで来てるのかもしれん。
ウザい思われたらどないしよ。
自分勝手やって思われたらどないしよ。
嫌われたらどないしよ。
俺の抱えてる心配を払拭するように、アイツはほんま変わらずいつも通りで、一気に力が抜けた。
『ヤスくんだって、お弁当ありがとうって、言ってくれるやん！それと一緒！だから、ありがとう』
ただただ、まっすぐに。
裏も表も計算もない笑顔で俺に向き合ってくれるAに、胸が熱くなる。こんな健気でええ子に、俺なんしてたんやろ。素直にならんで意地張って、意固地になって…そう思うと、つっかえていたものが取れた気持ちになった。
「A」
『っ…な、なに？』
膝を抱えていた手を伸ばして、目の前にいるAの両手を包み込む。二人の間に緊張がはしる。俺の言葉を待つAの手を、キュッと力を込めて握った。
「まずはな…たくさん、謝りたい。
ほんまに俺、自分勝手で、
Aの優しさに甘えてばっかで、
無理も我慢もさせてばっかで、
傷つけてしまうことして、ごめんなさい」
目まん丸にして、涙が溢れるんやないかって思うくらい目が潤んで、首を横に振るA。
「自惚れるくらい、
好かれてるって思ってしまってたから…
Aの気持ちに、甘えてしまって、ほんまにごめん。
気づくの遅くて、ほんまにごめん」
アイツの目から涙が溢れる。俺が手握ってるせいでぽろぽろ流れてて、それを拭おうと伸ばした手。
やけど、触れる手前でなんか躊躇ってしまった。
伸ばした手を引っ込めて、握っていた手を離そうとすると、逆にAが俺の手をぎゅうっと握った。
『これはっ…ヤスくんがとめて…っ』
次々と溢れる涙を拭うために、もう一度手を伸ばした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 636人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼乃碧(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました！そして…完結おめでとうございます！コメントを拾って下さって本当に嬉しかったです！ (2020年2月12日 21時) (
レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - ゆんゆさん» ゆんゆさんコメントありがとうございます！無事完結することができました^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
おゆ(プロフ) - みきさん» みきさん！毎回更新の度にコメントして下さってありがとうございました！わたしも最後まで更新できてうれしいです…！！！引き継ぎどうぞよろしくお願いします^ ^ (2020年2月12日 20時) (レス) id: c48463ca18 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 完結おめでとうございます！主人公のこと大好きなヤスくんが読めて嬉しいです！今後の作品も楽しみにしています！ (2020年2月12日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！読めるだけで嬉しいです。続きも楽しみにしています！ (2020年2月3日 7時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おゆ | 作成日時：2019年8月4日 0時
