イチバン【青】

されるがままに ページ25

大倉くんに送り出されて、専門の校舎の中にある多目的ホールで、ヤスくんの講義が終わるのを待つ。多目的という名の通り、生徒が自由に使えるように解放されていて、昼休みはかなり賑わっている場所。今は放課後、しかも最終講義中だから、人は私しかいない。




『うー、うー、緊張する…っ』




講義終了のチャイムとともに高鳴る心臓。
ネガティブ退散。ビビる気持ちも退散。
大丈夫、大丈夫、気合いだ気合いだ気合いだ！
と頭の中で呪文のように繰り返す。




「っは…！？！？ど、どどどどど、…！！！！？」




いきなり声がしたから顔を上げると、入り口付近でこちらを驚いた表情で見つめるヤスくん。これでもか！って程お口があいている。唖然という言葉がぴったり。




『どぇ！？！？や、ヤスくん…！！！！』




そんなヤスくんを目の前にした私は、緊張なんかそっちのけで大興奮。だって、くるくるの髪の毛初見！！！とてもとても似合ってる！！！すごい！！！かわいい！！！うわー！うわー！




『ヤスくん髪の毛「どないしてん！？」




興奮したまま、入り口で立ち止まっているヤスくんに駆け寄ると、ものすごい勢いで肩を掴まれ、私が話し出すのを遮ってヤスくんが話し出した。




「この髪なんやの？なんで？なんで染めたん？綺麗な黒髪やったやんかぁ…」




大倉くんと同じことを言ってるはずなのに、ヤスくんに言われると染めたことをものすごく後悔した。良かれと思ってやったことが裏目にでる程切ないことはない。

興奮も冷めて心が折れそうになる。
ヤスくん、黒髪気に入ってたのか。ががーん。




「…諸事情ってこれか…」

『…その通りです…
こんな色にする予定じゃなかったんだけど…こんな色になっちゃった』

「ふーん…そうなんや…」




お口をあんぐりとあけていたヤスくんはどこかへ行き、少し考えるような仕草をした後、よし、と自分の中で何かに納得したヤスくんが私の手を引いて歩き出した。




『え、え、ヤスくん！？どこ行くの？』

「3階」

『なんで！？』

「……諸事情、かな」




エレベーターを待つ間、こちらをちらりと振り返ったヤスくんは、口角を上げてニヤリと笑った。

その表情に、ドキンと心臓が跳ねた。

予想外の展開→←気合いの入れ方

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