Long time no see 3. ページ38
.
「はい、もしもし？」
『ナナ？』
「うん」
スマホを耳に押し当て電話に出れば、
聞こえてきたのはどこか懐かしい
安心する声で、
『なんか、ごめんな…』
『急に、お前の事思い出してさ』
そう言った電話の相手は、
以前付き合っていた彼氏。
彼とは東京に転勤が決まった時に
別れてしまったけれど、
それでも時々こうして思い出したように
連絡をくれていた。
｢私も、ちょうど誰かと話したかった気分なの…｣
｢こんな時にかけてくるなんてタイミング良すぎ｣
｢ねぇ、もしかしてエスパー？｣
なんて、懐かしい彼の声に
酔った勢いも手伝って嫌味っぽく言えば
『ははっ、違ぇし…！』
『お前、さては酔ってる？』
長い間一緒に居た相手だからこそ、
少しの会話でも気付く事がある。
彼は電話越しにそう言った。
挙げ句の果てには、
『ほんっと昔から色気ねぇよな、お前』
と、付け加えられた台詞にカチンときて
私は顔を歪ませた。
どこかで聞いたことのある台詞を
また言われた事に苛ついたのだった。
｢余計なお世話で…｣
そこまで言ったところで
ふと視線を感じて顔を上げれば、
目の前には想像もしていなかった人物の姿。
仁王立ちで腕を組みながら、
私をじーっと凝視している事に気付き、
足が止まった。
「………え、待って、何で？」
(何でアイツがここに居るの？)
『ナナ…？』
会話の途中で突然黙り込んだ私の耳元では
何事か、と不思議そうに会話の続きを待つ
元彼の声が響く。
すると、正面で私を見ていた相手は
スタスタと歩み寄り距離を詰めるとずいっ、と
顔を近づけ、目を細めながら言った。
｢うわ、めっちゃ酒臭い…｣
｢はっ！？｣
(何それ…)
いきなり現れたかと思えば、失礼な！
そう思って、思わずスマホを耳から離して
ムッとする。
すると彼は手で髪を掻き上げると
毛先をきゅっと掴んで呆れた表情をして、
大きく綺麗な瞳で私を視界に捕らえながら
更に続けてこう言った。
｢なぁ、電話…｣
｢…え、｣
(電話？)
手で電話するような仕草をして
呆れた表情を見せた彼は、一度聞いても
なかなか理解しきれなかった私に対して
はぁ、と大きな溜め息を漏らして…
｢だから、電話…｣
｢それ、まだ通話中やないん？｣
｢ええの？｣
.
Long time no see 4.→←Long time no see 2.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やよい(プロフ) - ryoさん» こんばんは、コメントありがとうございました！何だかすごく褒めて頂き光栄です(>_<)ありがとうございます、嬉しいです。これからも更新頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2020年3月17日 23時) (
レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - ちなつさん» コメントありがとうございます！すごく昔に書いたお話のリメイクなので自信無かったんですが、気に入ってくださって嬉しいです(^^)実は、私もちなつさんのお話私読みに行かせてもらってます。笑 なのですごく嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年3月17日 23時) (レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
やよい(プロフ) - まりさん» コメントありがとうございます！一気読み、是非ともしてもらいたい。笑 なので私も更新頑張りますね(^-^) (2020年3月17日 23時) (レス) id: d2cb7d4c05 (このIDを非表示/違反報告)
ryo(プロフ) - 初コメ失礼します。とても素敵なお話で、とても楽しみに読んでいます。ちゃんとした小説を読んでいるようで文章力の高さに感心致しました。これからも素敵なお話沢山作って頂けると嬉しいです！ (2020年3月17日 19時) (レス) id: cb9873671c (このIDを非表示/違反報告)
ちなつ(プロフ) - めっちゃ面白いです！この作品大好きです！ (2020年3月17日 0時) (レス) id: e54f0cecc3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やよい
| 作成日時：2020年3月16日 16時
