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「ヤス、山田さんと喋ったことある？」
「山田さんて、同期の？」
ヤスは絞ったレモンをチューハイの中に入れて、俺をちらりと見る。
俺は煙草を指で叩き灰を灰皿に落としながら頷いた。
「おん。ある。」
「え、あるんや。」
「入社式ん時、隣やったから。」
「へえ。どんな人なん？」
「どんなて、うーん、真面目？僕やってあん時ちょっと喋っただけやし、五年前やからあんまり覚えてへんわぁ。」
「まあそらそうよな。」
煙草をもう一度口に咥えると息を吸い込む。
自分でもなんで山田さんの名前を出したのかよう分からへんかった。
それほど今日の昼の出来事に興味があったわけちゃうし、それどころか出来れば関わりたないのに。
今まで頭の中で顔を浮かべたこともなかった人物のことを会社の外に出てまで考えてることが不思議やった。
「なんで？大倉山田さんと接点あったっけ？」
ジョッキの中をマドラーで豪快にかき回すヤスの顔は既に赤みがかっている。
ヤスは酒に強いけど、すぐ顔が赤くなる。
本人曰く、おとん譲りらしい。
「いや、俺も喋ったことないんやけど今日さ…」
今日あったことをビールと煙草を交えながらざっと話すと、
「それはちょっと心配やなぁ。」
とヤスは眉をひそめた。
やっぱりヤスは俺より数段上や、と俺は感心する。
俺やったらこんな話聞いても、『ふーん、それはメンドくさそうやな』としか言わへんし、
そもそも心配なんていう概念なかったもん。
ヤスってすげえな。と思いながら、
「心配？」
と聞き返す。
「せやって今パワハラとかに世間が敏感やん。仕事辞めろなんて言うてもうたら訴えられたら立場ないで？」
なるほど。と俺は深く相槌を打った。
確かに、ヤスの言う通りや。
正直少し上司にきつく叱られたくらいで社内で泣くんもどうかと思うけど、
仕事辞めろは誰が聞いても言い過ぎだと思うだろうし。
ヤスってほんますごいわ。
パワハラまで気い回らへんかった。
派閥の板挟みになったら嫌や、とか思ってた自分が少し恥ずかしくなる。
ただその話はそれ以上は広がらず、俺らはいつものように仕事の話もほどほどに他愛もない話をしながら酒を飲んで月曜日やから、といつもより早い9時半には解散した。
ほろ酔いでヤスに「ほななぁ。」と手を挙げた時は、あいつの結婚のことも、山田さんのことも、
俺の頭の中からなくなっていた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
