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「…なんで」
「お願いだから。もうそれ以上は。」
俺の口を塞いでいた彼女の白い手はゆっくりと俺から離れて、
その向こう側の彼女はひどく苦しそうな――だけどそれはとても人間的な――表情だった。
街灯の明かりが彼女の瞳に反射して映ってて、それが心なしか涙を溜めているようにも見える。
「……言わしてもくれへんの？」
告白が未遂で終わるなんて前代未聞やし、
まだ体に残ってたアルコールが一息に抜け飛んだ気がした。
「…まだ、間に合うから。」
「間に合うって…何が？」
歯切れの悪い彼女に俺は苛立ちさえ覚えていた。
歯がゆさと、不安と、そして胸の痛みと。
正直、彼女の言葉を聞くのが怖かった。この恋が上手くいかへんことはもう、分かってたから。
幾つになったって、傷つくのは怖い。
「元どおりに戻れる。」
彼女はもう俺を見ていなかった。うつむいたまま動かへん。
「元どおりってなんなん…？告白させてもくれへんのに、元どおりもなんもないやん。」
さっきまで腕の中にいた、キスやってした、彼女の存在は本当にそこにいるのかいないのか、そんなことすら分からないほど遠い。
「大倉くん、私」
顔を上げて俺を見る目は微動だにしなかった。
「好きな人がいる。」
しん、と静まった辺りに彼女の消え入りそうな声が頼りなく浮かんで消える。
金木犀の香りが風に乗って皮肉なほどに優しく僕らを包んだ。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
