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……このままじゃ、あかんな。
薄暗いオフィスの中でひときわ煌々と光るパソコンの画面をぼんやり見つめそう思った時に、
パチン、と音がして視界が明るくなった。
突然点いた天井の灯りを見上げて入り口の方に目を向けると、
「あ…。」
そこにおったのは山田さんで。
「残業？お疲れ様。」
彼女は俺の方をちらりとだけ見るとオフィスの中に入ってきた。
「うん…山田さんは？」
「USB忘れて。」
「そーなんや…。」
あの一件があった後、社内で顔を合わせるとお互い小さく会釈くらいするようにはなっていたけど、まともに話すのはこれが初めてかもしらん。
…山田さんは、後悔とかしたことあるんやろうか。
俺みたいにずっと引きずってる過去とか、苦い思い出とか、あるんやろうか。
山田さんの姿をぼうっと眺めていると、もう一度、目が合った。
「仕事、積んでるの？疲れてるみたいだけど。」
相変わらず、彼女の声には温度がない。
淡々としていて、そこには情があるわけじゃなくて、だからと言って冷淡かと言われるとそういうわけでもない。
不思議な雰囲気と、不思議な声のトーン。
部屋全体を包む白い蛍光灯の光と彼女の声、そして俺の中に渦巻いていたいろいろな回想と感情がまた少し、俺の思考回路を麻痺させた。
「山田さんも、後悔とか、するん？」
さっきまでぼんやりと考えていたことがするりと口から出る。
遠くからでも彼女が突然なんの脈絡もない質問をした俺にぽかんとしているのが伺えた。
「…幼馴染がな、今度結婚すんねん。」
「……へえ。それはおめでとう。」
「…そいつとは、物心ついた時から一緒やったんやけど、知らん間に好きんなっててさ。めっちゃ、好きで。
けど、俺、あほやし意気地なしやから、あいつにちゃんと好きやって言われへんままあいつに好きな人ができて、それで。
それで、そのまま終わってもうてん。」
それはもはや独り言のようなもので。
彼女の反応など気にもせず焦点の合わない視線で俺はぽつぽつと言葉を口から発する。
「もう十年くらい経つのに、今でもそん時のことずーっと後悔しとんねん。」
めっちゃ、好きやった。
めっちゃ好きやったのに、ついに何の言葉にもされず無かったものとされてしまった俺の気持ちが、ずっと心ん中で燻って、
その苦味だけがずっと残って苦しかったし、今も苦しい。
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蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、初めまして。有難いお言葉に胸が熱くなりました…後先考えずにがむしゃらに書いてしまった荒すぎる出来の中でふたりの互いに想い合う気持ちは一番慎重に書いたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！こちらこそ読んでくださりありがとうございました^^ (2018年11月10日 23時) (
レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - はじめまして。あまりにも続きが気になって一気に読ませて頂きました。描写はもちろん、ヒロインと大倉くんのお互いを想う切実さが綺麗で、思わず息が詰まりました。とっても素敵なお話をありがとうございました。 (2018年11月9日 15時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2018年8月7日 18時
