語らい。 ページ33
『逃げて』
その一言が突然、脳に響き渡って目が覚めれば、ガイアのユニフォームを着ていることにすぐ気付いた。
「うへえ、」
ガイアのユニフォームって、ぴっちり肌に着くから気持ち悪くて嫌いなのに。
それより、目が覚めたのは間違いなくガイアの共有スペースだ。
ソファから体を起こして、当たりを見れば誰もいない。
もう一度横になって、耳に残った声が誰だったのか思い出す。
「レーゼ……」
考えてみれば、レーゼは雷門として対面した時も私との試合は避けた。
それも、私に逃げて、と伝えて。
どうしてレーゼだけは逃げる事を私に勧めていたんだろう。
ぅうむと、頭を抱えれば背後から、ウルビダが考え事か？と聞きに……凄く普通に声をかけてきた。
「え、はい……」
「グランから様子を見るように言われたんだが、」
ウルビダ。正直あんまり話した記憶が無い。
だから、どんな人だったか、ちょっと記憶が曖昧なのにすごく普通に話しかけられると、よくわからなくなる。
「ねえ、ウルビダ……聞いてもいいかな」
何となく……答えてくれるような気がした……。
「私を……部屋から連れ出したのは……ウルビダ？」
ぴくりと、ウルビダの肩が跳ねた。
小さくため息をついたウルビダが、じっと見つめて来た。
冷たい、表情の読めない顔なのに、不思議と怖くなかった。
「ウルビダなんだね」
「記憶、無いんじゃなかったのか」
「絶賛思い出し中」
なんだ。とだけあっさりしたウルビダは、隣に座った。
「ウルビダは私がお父様と何を話していたかは知ってる？」
「さあ、知らない」
そうだよねえ。とソファに横にやれば緊張感のないやつ、とウルビダに冷ややかに見られる。
こうやって、相対して話せば記憶の向こうにいた恐怖の塊だと思っていた皆は優しくて暖かい大切な仲間。
なのに、私はこの記憶を皆を……怖がって捨てたのは……。
「あ、思い出した……」
「ん？」
がばっと飛び起きて、ウルビダを見詰めれば不思議そうに瞬きを繰り返すウルビダ。
「ウルビダ、あの時私の事引っぱたいたでしょ」
「……何だ、そんなことか」
痛かったことを思い出した。
部屋に閉じこもり、もうサッカーはやらないと心を閉ざした私に、ウルビダが引っぱたいて部屋から文字通り引きずり出して。
「頭でも冷やして来いって身一つで樹海に放り出したね」
「ボールは渡しただろう」
「いや、寒かったの覚えてる」
「時効だ」
都合いいこと言うなあ、ウルビダは。
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守羽(プロフ) - マナさん» コメントありがとうございます。すみません…手違いで先に続編を立ててしまった次第です。本日続編分まで合わせて更新するのでお待ち頂けたら幸いです。 (2022年8月19日 16時) (
レス) id: d0d25ba477 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - この話の続きが気になってますが、パスワードがかかっており話が読めないのですが…… (2022年8月19日 9時) (レス) id: dac527e381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2022年8月14日 14時
