自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep2 (ページ46)

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私が笑うから。ページ46

「そう言わないでさ」

突然腕掴まれて。咄嗟に振り払おうとしても、ビクともしなくて。涼しい顔をしたその人は口元だけ笑みを浮かべた。

実況の人の声が響いてくる。

「君、本当に覚えてないの？」
「……なんの事、きゃ！！」

掴まれた腕を引かれて、ボトルが落ちて転がる音が響いた。振り解けない力強さ、思わず掴んでしまったその人の服。慌てて押しのけようにも、びくともしないから。

「離して！」
「そんなに嫌がらなくても」

きっ！と睨みつけてもなんの効果もない、むしろなんか喜び始める。

「わあ、君ってそんな顔も出来たんだね。今の仲間の影響かな？それとも、記憶がないから？ねえ、こんなに近くても思い出さない？」
「知らない！貴方みたいな人！」

力いっぱい突き飛ばせば、酷いなあと微笑むその人。思わず力が抜けて座り込めば、楽しそうに口元だけが微笑む。目が、笑ってない。

「まあ嫌でも思い出すよ。俺達のこと」
「あ、待って……！」

立ち去ろうするその人を思わず呼び止めれば、普通に止まって少し駆け足で寄ってきてくれる。や、なんで？

「何か思い出したの？」

目の前に腰を下ろされ、期待十分にその人は目を輝かせ……てないね。目笑ってないもん。

「どうして私に関わろうとするの？私は、思い出したくない記憶かもしれないのに」

声が、震えた。

その人の目が怒りに支配されたみたいに怖くなる。

「言ったよね、嫌でも思い出すって。その証拠に今君はFF大会に居るんだから」
「ど、ういう……」
「関わる理由かー、そうだなあ」

うーん、と宙を仰いでみたり、考え込んだその人は、目を細めて笑った。

「君が笑うから、かな」
「……へ」
「また会いに来るよ」

そう言って、暗闇へ消えていく後ろ姿をただ、見続けた。
意識の遠く向こうで、ホイッスルの音が聞こえた。試合開始だ……。急がないと、決勝戦だから……、皆の応援に行かないと。

私が……笑うから、あの人は私に関わるの？

お世辞にも、絶世の美女とは言えないし、むしろ美人なのは雷門さんのような人のことを指して愛らしいのは音無さんで、目を引かれるのは木野さんで……私は、何かに秀でた訳でもない、とりわけ美人でもないのに。

グランドへ歩いて向かえば、実況の音が近付いてくる。

あの人の目は、冷たくて、怖くて、

「いっ……」

突然の頭痛に頭を抑えた。あの人の目。どこかで見た事ある……？

ぱっと、空が開ければグランドが見えた。そこには、倒れ込む皆がいた……