自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep2 (ページ28)

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木戸川清修。ページ28

「…誰にも言ってないんだ。あの日のこと」
「へ？」

休憩時間、皆と合流してご飯を食べていると修也くんが不意に言葉を零した。私はご飯をこぼした。

膝元に落ちたご飯粒を、いや、塊か。拾ってティッシュに包んでいれば修也くんはちらりと見て話を続けた。

「夕香の事故のことだ」
「え？じゃあ、その二階堂監督も知らないの？」
「ああ。あの日、ただ行けない事だけを伝えたからな。だから、正直木戸川の皆は俺の事を恨んでいて当たり前なんだ」

とん、と肩に寄りかかってきた修也くんは何かを考えるように目を閉じた。
修也くんの髪が頬に触れてくすぐったいけど。

「何度だって言うよ、修也くんは絶対に悪くない。修也くんは胸を張って、堂々と木戸川清修と試合をすればいいんだよ」
「……ああ」

お弁当を片付けて、いつの間にか寝息を立てていた修也くんを軽く揺すって起こして。修練場へ戻るのを確認してから私も教室へ戻る。
そろそろ雷門さんへ苦情を入れたいレベルで課題が難しいのですけれど。

.

そうして、迎えた木戸川清修との試合。
修也くんはただ、何も言わずにいつものようにユニフォームを着て。
フィールドへ向かう皆へがんばれー！と木野さん達と声援で送り届けて。軽く振り向いた修也くんと目が合えば、優しく微笑まれた。

「豪炎寺さん、これだけ特別扱いしておいてまだ付き合わないんですね」
「お、音無さん…ほら今は試合に集中しよう、ね？」

スコアブックを音無さんから受け取り、木野さんはストップウォッチを首にかけて。相も変わらず凛々しい姿勢でベンチへ座る雷門さんの隣に座れば少し驚いた顔をされた。

「貴方、いつもは隣に座らないじゃない」
「う……わざわざ言葉にしないで。雷門さんに慣れようと思って」

居心地悪いなあ、もう。と文句を言えば、可笑しそうに雷門さんは笑う。精々頑張りなさい、と上から目線なお言葉を頂いて。

ホイッスルがなり、試合が始まった。

怒涛の勢いで、三兄弟が攻め上がってきて、バックトルネードという技で先制点を。

でも、その後の猛攻は円堂くんがしっかり防いでいく。

一進一退の攻防戦。

「壁山くんのザ・ウォールかなり制度上がってきてるね」
「あら…貴方、豪炎寺くん以外もしっかり見てるのね」
「ちょ、雷門さん……。当たり前だよ、同じ仲間だもん。それにほら、私何も出来ないから…」
「ちょっと、貴方本当にAさん？」

ぎょっとした目で見ないでください、雷門さん。