自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep2 (ページ2)

今日:18 hit、昨日:23 hit、合計:14,372 hit

夕焼けの帰り道。* ページ2

おかわりの声が上がる中、どっから麦茶の要望を受けて冷蔵庫から出してテーブルまで運ぶと空気が凍り付いた。

皆の視線の先は雷門さん。

土門くんが夏未ちゃんと呼んで凍り付いたようだ、気にせず麦茶を注ぐと笑い声が。

夏未ちゃん呼びいいんだ。

理事長代理としての敬意も忘れないでほしいという言葉に頷けば、響木さんから「理事長として」の言葉をどう送るか聞かれて、雷門さんは堂々と語る。

「必ず全国制覇を成し遂げてちょうだい」
「おう。やってやるぜ！なっ」

ちょっとダメージを受けてたけど、美味しい餃子でそれどころじゃない修也くんは円堂くんの言葉に親指を立てた。

「よーし！絶対やろうぜ！全国制覇！」
「絶対全国制覇！」

皆で拳を突き立てて、力強い決意と全国制覇への兆しに私も笑った。

夕日が差し込み始めて、皆は帰り始めた。

「Aもういいぞ」
「え、でもまだ洗い物もあるし、テーブルだって」
「俺がやっておくからいいよ。ずっと手伝ってくれてたろ？それに」

扉にうっすらと人影が。待っているだろ、と響木さんも円堂くんも。
それじゃあお言葉に甘えて…と鞄を持ち扉を開けて、最後に2人へ手を振り。

待っていた修也くんに声をかける。

「帰ってもいいって言ったのに」

行くぞ、と歩き出した修也くんの後を追いかけて、家までの道を歩き始めた。そういえば、さっきはしれっと雷門さんの隣に座ってたし。音無さんとも近かったし。

思い出してもやもやするけど、それを言葉にするのも訴えかけるのも筋違いだ。なにせ、付き合っている訳じゃない。
自分で言っててちょっと悲しいや。

何となく無言で歩き続けて、不意に立ち止まる修也くんに合わせて止まる。

まだ家までだいぶあるよ？
どうしたのかと思い声をかけようとすると突然振り向かれた。

「え、と」

何かを言いたそうに、躊躇っては。ため息をつかれる。
心外だぞ。

夕日に照らされた修也くんの頬が何となく赤みを帯びはじめた。
ジャージの襟をあげて、口元を隠して、

「名前」
「え？名前？」

ごめん、修也くんみたいに頭よくないからわからない。そう思って首を傾げれば、やっぱりとでも言うようにため息。
今日は優勝したのにため息ばかりで大丈夫ですか。

不意に、腕を引かれて修也くんにぐっと近付く。
歩幅1歩半、詰められた距離はとても近くて、ほんのりと汗の香り。

「豪炎寺って呼ぶな」
「…うん」

名前をつけられない関係だけど。擽ったいこの関係も嫌いじゃない。